第44話 真実を求めし者
草井の言葉に重さを感じながら、龍造寺は再び気を引き締めた。闇の剣を握りしめ、彼は草井を見つめ返す。彼の目には決意が宿り、今まで以上に闘志を燃やしている。
「では、試練を続けよう。お前の姿がこのままではないと信じている」
「その意志、受け取った」
草井はゆっくりと手をかざし、周囲が再び不気味な静寂に包まれる。その瞬間、空気が震えるような感覚が走った。龍造寺は周囲を警戒し、次の動きを待った。
「もう一手を打つぞ!」
草井が叫ぶと、突然、地面が揺れ、彼の指示を受けたゾンビたちが再び立ち上がり始めた。しかし、今度はその背後に、巨大なシルエットが現れた。それは人間のサイズを遥かに超えた、金属的な外装を備えた金色の防護服を纏った存在だった。龍造寺はそれを見て驚愕した。
「ZET1防護システム《ソ連製》だと…!」
その名は、彼が過去に聞いたことのある伝説の防護システムだった。古代の遺物として知られるその技術は、死者を操作する力を持つ存在を守護しているという。そして、草井がそのシステムを操ることで、いかなる生者も容易に近づけない防御の壁を築くのだ。
「これが、俺の真の試練だ」草井の声が響く。彼が持つ力は、もはや単なる試練ではない。龍造寺は、これまでとは異なる試練に直面していることを理解した。
「ZET1が相手だとは、厄介だ」彼は冷静に分析した。「だが、恐れることはない。俺は進む」
その時、ZET1は手を動かし、金属の装甲がうなりながら、飛び出してきた。龍造寺はすぐに闇の剣を振るい先手を取ろうとしたが、ZET1の反応は驚異的だった。すばやく身をかがめて攻撃を回避し、鋭い突進で彼に迫る。
「クッ…!」
龍造寺は素早く右に避け、その後、ZET1の懐に潜り込もうとするが、その硬質な体に阻まれ、攻撃が届かない。周囲のゾンビたちもまた、従って攻撃してくる。
「全く厄介な連中だ」
彼は思考を巡らせ、回避しつつ反撃のタイミングを計る。まずは周辺のゾンビを片付け、一気にZET1に攻撃を集中させなくてはならない。龍造寺は再びその場を駆け回り、剣を振り回す。
「これが試練だ!俺は絶対に進む!」
彼は闇の剣を一閃し、切り裂いたゾンビの残骸を飛ばして周囲の敵を散らしながら、前方のZET1に向かって真っ直ぐ突進した。剣を高く掲げて、その刃をZET1に向けて振り下ろす。
「受けてみろ!」
刃がZET1の肩に命中するが、その防護服は驚くほど頑丈で、わずかに傷を付けるだけに留まった。ZET1は一瞬の隙を作ると、反撃として大型の拳を放ってきた。
「危ない!」
避ける間もなく、その攻撃が直撃し、龍造寺は地面に叩きつけられた。痛みが走り、視界が揺らぐ。
「まだだ…!まだ終わらん!」
龍造寺はその痛みを振り払うようにし、立ち上がった。彼は再び闇の剣を握り直し、過去の試練で培った力を思い出す。
「自分の力を信じろ!」
立ち上がる彼の姿を見て、草井が曖昧な微笑みを浮かべた。「お前は真の力を試されている。これを乗り越えて初めて、力を得るのだ」
その言葉を胸に、龍造寺は再びZET1に向かっていく。今度は冷静に動き、剣を振るうよりも、ZET1の動きを観察する。
ZET1が次の攻撃をしてくる瞬間を狙い、身を屈めてその攻撃を回避する。背後から迫る死亡者たちに注意を払いながら、ZET1の足元に一瞬の隙を見た。
「これだ!」
彼は闇の剣を大きく振り下ろし、ZET1の足元を狙った。衝撃音が響くが、思った以上に効果があった。ZET1のバランスが崩れ、一瞬後ろに倒れそうになる。
「今のうちだ!」
龍造寺はその隙に、剣をZET1の体ごと貫通させ、力を込めて攻撃を続けた。金属が悲鳴を上げ、その装甲にひびが入り始める。
「受けてみろ、この試練を!」
そして最後の一撃を決める決意を固め、彼は全ての力を込めて闇の剣を振り下ろした。その刃がZET1の心臓部に突き刺さる。金属の悲鳴が響き、ZET1は崩れ落ちた。
「ああ…!」
草井の叫び声が響いた。その瞬間、彼の体から流れ出る力が失われていく。草井は倒れ、周囲のゾンビたちも動きを止めた。
「試練を…乗り越えたか…?」
龍造寺は草井を見つめ、「これで終わりではない」と心の中で誓った。彼は草井の姿を見る。その表情は明るく、どこか解放されたように見えた。
「草井、次の試練はどうなる?」
草井は静かに微笑んだ。「お前の力を試す最後の瞬間は、もうすぐだ。次は真の目的を見つけるための試練だ」
龍造寺は静かに頷き、心の奥に確かな決意を抱いていた。彼の旅は続く。新たな試練とともに、彼は進んでいくのだ。闇の剣を手に、真実のために。
龍造寺は草井の言葉を噛み締めるように聞き、心を新たにした。彼の目は再び闇の剣に向けられていた。今までの試練を乗り越え、彼は自らの力と決意を再確認した。
「次の試練がどんなものであれ、俺は受けて立つ。悪の道でも、それが真実に繋がるのなら、俺は進むべきだ」
草井は立ち上がり、その目が輝く。「お前は既に別の次元の力を手にしている。その力を使い、真実を追え。だが、その道は容易ではない。お前の魂が試されることになるだろう」
「構わない。そのために俺はここにいる」
草井の言葉は、龍造寺の心に火を灯した。彼は悪のミッションを引き受けることで、真の目的を見つける手助けをすることを決意した。進むべき道に迷いはない。彼は再び矢印のように、未来へ向かって突き進むのだった。
草井は続けた。「お前に与える次の試練は、過去の影と向き合うということだ。お前の目の前に現れるのは、過去の敵たちだ。彼らはお前の心の奥底に潜む恐れや疑念を具現化した存在になるだろう。それを乗り越えるためには、お前自身の力を信じなければならない」
「敵はどこにいる?」
「お前の選択次第だ。過去の影を映し出すゲートを開くためには、心の中の葛藤を認識しなければならない。そこに踏み込むことで、試練が始まるのだ」
龍造寺は深呼吸し、自らの内なる思索へと向かっていった。過去の自分、そして向き合った敵たち。心の中で再び思い出した瞬間が、彼の心を重くする。だが、逃げてはいけない。彼は立ち向かうと決めた。
「その時が来るまで準備を続ける。俺は強くなるために、どんな試練でも乗り越える」
草井は微笑んだ。「力強い意志だ。お前の旅路は長いが、必ずや成長するだろう。さあ、まずはそのゲートを開けるのだ」
龍造寺は不気味な静寂がある草原の中心に立ち、手をかざした。彼は心の中で過去の記憶を思い出し、ゲートが開かれるように力を込めた。すると、周囲の空気が変わり、不気味な影が形成され始めた。
その瞬間、彼の目の前に現れたのは、かつて彼が討伐した悪党たちだった。恐れおののく心を押し返すように、龍造寺は自らの覚悟を呼び起こした。
「お前たちが俺の過去の影か。だが、今の俺は違う。俺はもう一度、立ち上がる!」
影たちは同時に彼に襲いかかり、彼は剣を構えた。過去の記憶が彼の意志を試すように、闇の剣を振るい、立ち向かう。
「これが試練だ!」
彼は思いを込めて剣を振り下ろし、影たちと戦う。過去の自分に訴えかけるように、「俺は負けない!」と叫び、心の中で浮かび上がる疑念を打ち砕いていった。
影が崩れ、彼の決意が強さとなり、彼を包み込む。この瞬間、龍造寺は自らの悪のミッションを引き受けることで、さらなる力を得ることを信じて疑わなかった。
戦いが進む中、彼の中に確かな覚悟が生まれる。試練を乗り越え、進むべき道を見いだし、彼は真実を探し出す勇気を胸に抱いていた。闇の剣を握りしめ、彼は未来へと向かっていく。彼の旅は、まだ始まったばかりだ。
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