第43話 ゾンビ集団🧟🧟‍♀️

 龍造寺は草井の姿を見た瞬間、背筋が冷たくなるのを感じた。草井は以前から知っている人物だが、今彼の姿はまるで死者そのもののようだった。顔はひび割れ、皮膚は腐り、眼球は白く濁っている。しかし、その目には確かに生気が宿っていた。


 草井は周囲を見渡し、無言で手をかざした。その瞬間、背後に立ち並ぶ数十体のゾンビたちが一斉に動き出し、龍造寺に向かって歩き始めた。ゾンビたちの歩調は不規則で、腐敗した肉体が地面を引きずる音が響く。どれもこれも、草井に従う死者たちだ。


「草井…お前がこんな姿になってしまうとはな」


 龍造寺は、闇の剣を手に取り、戦闘態勢を取った。だが、草井の顔には疲れたような苦しみの表情が浮かんでいる。ゾンビたちは龍造寺を取り囲むように配置され、その隙間を埋め尽くす勢いで迫ってきた。


「お前にどうしてこんなことを?」


 龍造寺が問いかけると、草井は低い声で答えた。


「俺は試練を受けている。お前も試練を乗り越えなければならない。だが、俺は…この形になってしまった」


 その言葉が響くと、草井はさらに手を振り上げ、ゾンビたちが一斉に前進を始めた。だが、それだけではない。草井が呪文のような言葉を唱えると、ゾンビたちの中からさらに大きな怪物が姿を現した。身長は三メートルを超え、腐敗した肉が膨れ上がり、爪のような鋭い突起が生えていた。その姿はまるで死の化け物のようだった。


「これが俺の力だ…!俺はお前を倒し、試練を終わらせる。だが、お前にはまだその力を乗り越える力があるのか?」


 草井の声は冷徹でありながら、どこか哀しみが込められていた。ゾンビの大群とともに、その巨体が龍造寺に迫る。


「試練を乗り越える力…か」


 龍造寺はしばし沈黙し、周囲を取り囲むゾンビたちを冷静に観察した。これまでの戦いでは、敵がどれほど強力でも、冷静さを保ち、闇の剣の力を信じることで切り抜けてきた。だが、今回の試練は一味違う。草井が操る死者たちは無限に湧き出てきそうで、数の力に圧倒される可能性もある。


「だが、俺は進み続ける」


 龍造寺は力強く宣言し、闇の剣を握り直した。すると、目の前のゾンビたちが一斉に動き出し、まるで一つの意志で龍造寺を包囲しようとする。


「邪魔だ!」


 龍造寺は闇の剣を振り上げ、周囲のゾンビに向かって一閃した。刃が振り下ろされると、目の前のゾンビたちが次々に切り裂かれ、死者たちの体が地面に崩れ落ちる。しかし、草井が再び手を振り上げると、新たなゾンビたちがすぐにその隙間を埋めていく。人数が圧倒的であり、龍造寺はその全てを一度に相手にするのは困難だと感じた。


「これが試練か…!」


 龍造寺は冷静さを失うことなく、闇の剣を次々と振り、迫るゾンビを切り裂きながらも、草井が指揮するゾンビの大群を捌き続けた。その間にも、草井は呪文を唱え、さらに強力な死者の兵士を召喚してくる。その中でも、あの巨大な死体の怪物が再び動き出し、龍造寺に向かって突進してきた。


「避けられない!」


 その瞬間、龍造寺はひらりと飛び退り、間一髪で怪物の攻撃を避ける。その巨大な爪が地面を引き裂き、周囲に破壊の波紋を広げた。


「うまく避けたな…だが、逃げられると思うな!」


 草井の声が響く中、龍造寺は一瞬の隙をついて、闇の剣を再度高く掲げた。剣の中に宿る力を引き出し、闇の力を全身で感じ取る。闇の剣が放つ黒いエネルギーが集まり、龍造寺はその力を一気に爆発させた。


「これで終わらせる!」


 闇の剣が放つ一撃が、巨大な死者の怪物に向かって放たれた。その刃が怪物の体を貫き、一瞬でその体を引き裂いた。怪物は絶叫しながら倒れ込み、ゾンビたちの大群もまたその力に圧倒されて崩れ去っていった。


 しかし、草井はまだ立ち上がり、憔悴しきった顔で龍造寺を見つめていた。


「これで試練は終わりか?」


「まだだ…」草井はかすかな笑みを浮かべながら言った。「お前が真の力を手に入れるまで、俺の試練は終わらない…」


 その言葉に、龍造寺は自らの闇の剣に再び手をかけ、前を見据えた。試練は続く。しかし、彼はもう迷うことはない。


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