第36話 マッドサイエンティスト
首田が悪右衛門から手に入れた力で復讐を進める中、物語の世界は次第に狂気と恐怖に満ちた道へと突き進んでいく。その道には、草井という名の男が絡んでいた。草井は、どこか異常なほどに知識を持った人物で、科学と毒、そして復讐に対する異常な情熱を持つマッドサイエンティストだった。彼の名が、首田の耳に入るのは、ある日、偶然だった。
草井は、若き日の娘にひどく裏切られた過去を持っていた。彼女は信じていた男に騙され、心底愛していたものを奪われてしまった。その男に対する憎しみが草井を歪ませ、やがて彼は自らの手でその復讐を果たすため、恐ろしい手段に手を染めることになる。
ある晩、草井の研究所を訪れた首田は、そこに並べられた奇妙な実験道具や、異常に巨大化した植物たちを目にする。草井は彼を出迎えると、まるで獲物を前にしたような眼差しを向けてきた。
「君も復讐に魅せられた者か?」草井の声には、冷酷さと狂気が混ざり合っていた。「私がこれまで作り出してきたものを見ていくがいい。私の実験は、ただの科学ではない。復讐の道具だ」
草井が指し示した先には、巨大化した植物たちがずらりと並んでいた。最も恐ろしいのは、「グロリオサ」というアフリカ原産の毒草だった。この植物は、その花弁に強力な神経毒を含み、一度触れると、相手の神経系を破壊し、瞬時に死に至らしめる。草井はその植物を使い、かつて娘を裏切った男をゾンビ化するための実験を行っていた。
「この草で、彼は死ななかった。しかし、意識を失った後、あの男は蘇った。そして、今や私の手のひらで操れる。ただのゾンビではない、意識を持ち続けるゾンビだ」草井は得意げに語った。
しかし、草井の計画にはさらに恐ろしいものがあった。彼は過去の復讐に満足することなく、次なるターゲットへと向かっていた。それは、彼を過去に虐めた同級生たちだった。彼らに対する復讐のために、草井は自身の庭に育てた巨大化した植物たちを使おうと決心していた。
草井は次々と恐ろしい実験を行っていく。巨大化したムシトリスミレや、巨大化したウツボカズラは、その吸引力で人間を飲み込むように作り上げられていた。ウツボカズラはその消化液で人間を溶かし、ムシトリスミレはその葉で肉を引き裂き、消化する力を持っていた。
さらに、草井の研究室には、巨大化したハエトリグサが置かれていた。この植物は通常のハエトリグサと違い、何倍もの大きさで獲物を捕らえ、その肉を貪り尽くす。その恐怖の力を使い、草井は復讐を計画していた。
草井の実験室には、さらに恐ろしい毒草が揃っていた。スズランの毒、ハシリドコロ、ドクウツギ、トリカブト、そしてドクニンジン—これらの植物や薬草は全て致命的な毒を持ち、誰かがそれを摂取すれば、数分以内に死に至ることになる。草井はこれらの毒を使い、かつて自分を傷つけた者たちに復讐を果たすことを決意していた。
首田は、草井が描いている恐ろしい未来に驚愕しながらも、彼の手にした力を使って何を目指すべきかが分からなくなりつつあった。彼は草井の復讐の道具を目の当たりにし、その力を手に入れるべきかどうか、迷いを感じていた。
「君も、私と同じように復讐のために歩みを進めるのか?」草井の言葉が首田の耳に響く。
首田は一瞬、深いため息をつく。「復讐の道を進むことが、果たして正しいのか。だが、君の手にした力には、確かに魅力がある」
草井はその言葉を聞き、笑みを浮かべた。「そうだろう。だが、この力を使うとき、代償が伴うことを忘れてはいけない。君も、私のように変わり果てることになるかもしれない」
首田は深く考え込む。そして、決断した。復讐を遂げるためには、この力を使わなければならないと。だが、草井が使ってきた恐ろしい手段の数々が、彼をどこへ導くのかは分からなかった。
「私も、君のような力を手に入れるべきか」
首田はつぶやいた。
草井は満足げに首をかしげ、首田の前に立って言った。「力を使うかどうかは、君の選択だ。しかし、覚えておけ。力はいつも、それを使う者を支配し始める」
そして、草井は首田に、再び恐ろしい道具と薬草の数々を手渡した。その先に待ち受けるものが何であれ、首田は復讐の道を歩み始めたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます