第26話 1945
予想外の連携
クロザワが静かに息を呑み、周囲の暗闇に目を凝らしたその瞬間、ヴィクター・ハルトマンの車は音を立てて動き出した。クロザワはただ立って待つことができなかった。高橋と渡辺もまた、各自の位置でそのタイミングを待ち構えている。だが、彼が予想していた「警備員」の動きとは異なり、影の中から浮かび上がってきたのは明らかに別の存在――暗殺者たちだった。
クロザワの経験から、これらの人物はただの兵士ではない。動きが、呼吸が、明らかに違っていた。クロザワは素早く体を低くし、音波ピストルを構えながら状況を整理した。これらの暗殺者たちはおそらく、「ノクス・シンジケート」に仕える者たちで、モロキューのメンバーの動きを追っている。クロザワは心の中で冷静に判断を下す。今、ヴィクター・ハルトマンを殺すチャンスはあっても、同時に彼自身も狙われている。だが、彼には戦う理由がある。その理由が、モロキューの運命を左右するからだ。
決戦の兆し
ヴィクター・ハルトマンの車は、先に進んでいたが、その動きが一瞬、遅れた。クロザワの目の前に立ちはだかる暗殺者たちは、誰もが冷徹で計算された動きで迫ってきた。音波ピストルを持つ高橋も動きを見守っていたが、引き金を引くタイミングを見失っていた。渡辺もまた、スモークガスの準備をしていたが、それがどのタイミングで使用すべきかが決まらなかった。
その瞬間、ヴィクターの車が急停車し、何かが進行中の作戦に影響を及ぼした。しかし、クロザワはその予兆に気づく暇もなく、戦闘が始まった。
1945年に向かい、不沈特火点との遭遇
突然、クロザワの耳に、遠くからの低い振動音が聞こえてきた。それは地響きのようで、空気が震えるような感覚を伴っていた。直感的に、クロザワはその音が単なる車のエンジン音や爆発音ではないことを理解した。それは何かが地下から、または海から押し寄せてくるような音だった。
ヴィクター・ハルトマンの車が完全に停止したその時、クロザワは驚愕の光景を目撃する。地面がわずかに揺れ、そして、目の前に現れたのは信じられないほど巨大な物体だった。それはまるで海上を移動する巨大な兵器のように、クロザワたちの前に浮かび上がってきた。
不沈特火点
その物体は、第二次世界大戦中に開発された極秘兵器「不沈特火点」だった。その名の通り、海中で動く兵器であり、どんな攻撃も受け付けず、またその特異な構造で、発見されることもなかった。設計は1945年の末期、戦争の最中に行われ、完全に水中での戦闘を想定していた。
クロザワが目にしたのは、その姿そのものであった。かつて戦争の終息を迎える直前に沈められ、そして長年にわたり沈黙を守っていたこの兵器が、今、再び姿を現したのだ。恐るべきことに、モロキューのメンバーでも、この兵器が今も活動しているとは知らなかった。海底に眠っていたはずのその機体が、今、目の前で息を吹き返したのだ。
戦いの行方
クロザワは、目の前に現れた巨大な兵器を見つめながらも、その目線をヴィクター・ハルトマンの車に戻した。暗殺者たちとヴィクターの間で、いったい何が繋がっているのか。クロザワは知りたかった。この兵器が意味するもの、そして、それがモロキューの命運にどう影響を与えるのか。だが、すでにその時には、彼の選択肢はほとんど残されていなかった。
不沈特火点が放つ強烈な閃光が、クロザワの視界を完全に覆った。その瞬間、ヴィクター・ハルトマンの車が爆発を起こし、その場のすべてが煙と炎に包まれた。クロザワは音波ピストルを構え、動きを見守りながら、ただただその状況を把握しようとした。
ヴィクターが狙われたのは、この不沈特火点の登場が何かを暗示しているからだろうか?それとも、この兵器が解放されること自体が新たな戦争の始まりを意味するのか?クロザワには、答えを出す時間すら与えられなかった。
不沈特火点の正体が明らかになるにつれて、クロザワはただその破壊的な力を受け入れ、決して後戻りできない戦いへと突き進んでいった。
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