第27話 1890年のフランスと戦艦オッシュ
クロザワが目の前で繰り広げられた衝撃的な爆発を目撃したその瞬間、奇妙な感覚が彼の体を駆け巡った。閃光と爆風に包まれたその一瞬、時間の流れが歪み、彼の意識がどこか別の次元へと引き寄せられるような感覚を覚えた。
そして、次に気づいた時、クロザワは見慣れた風景の中に立っていた。だが、まったく異なる世界に。周囲には蒸気機関車の音が響き、路地を歩く人々の服装も、目の前の建物も、すべてが19世紀末のフランスのものだった。驚愕と戸惑いの中で、クロザワは自分がどこにいるのかを必死に理解しようとした。
「ここは…一体どこだ?」
彼の問いかけに、周囲の人々は無視するかのように通り過ぎ、ただ忙しそうに歩いている。だが、クロザワがふと見上げると、遠くの港に異常な光景が広がっているのに気づいた。海上には巨大な戦艦が停泊している。それは、戦艦オッシュ("Ouch")―― 1890年に建造されたフランス海軍の極秘兵器で、当時としては未知の技術を駆使した戦艦だ。
だが、クロザワにはそれがただの過去の戦艦だとは思えなかった。彼は直感的に、それが今目の前に現れるべきではない存在だと感じ取った。まるで、歴史が歪められた結果、本来存在しないはずの戦艦が、異なる時間軸から現れたかのように。
クロザワは急いで港へ向かう決心をした。彼が知る限り、この戦艦オッシュは最も秘密にされていたフランス海軍の兵器の一つで、実際には一度も正式に運用されることなくその建造が中止されたとされていた。だが、もしそれが本当に存在しているのなら、その意味するところは大きい。しかも、彼がタイムスリップしてきた1890年には、すでに不沈特火点のような極秘兵器が存在していたということだ。
戦艦オッシュの恐怖
クロザワが港に到着すると、その目の前に広がったのは、巨大な鉄の巨人だった。戦艦オッシュは、船体のあちこちに未来的な装置が取り付けられており、異様な輝きを放っていた。その姿はまるで、未来からタイムスリップしてきたかのように感じられ、クロザワはその船に近づくほど、背筋が寒くなるような感覚を覚えた。
「こんなもの、戦争で使ったらどれほどの破壊力を持つのか…」クロザワは呟きながら、戦艦オッシュに近づいていった。
船の甲板には、艤装が施されており、目を凝らすとそこには明らかに未来的な武装が並べられている。クロザワが船内に足を踏み入れると、無人の艦内は静寂に包まれていたが、その静けさの中に何かが潜んでいることを彼は感じ取った。
突然、彼の耳に微かな音が響く。それは、船の奥深くから伝わってくる、まるで何かが動き出す前兆のような音だった。クロザワがその音を追いかけるように進むと、艦内の一室に辿り着いた。その扉を開けると、そこには予想外の光景が広がっていた。
未来の兵器の起動
室内には、未来的なコンソールや、見たこともないような機械が並んでおり、その中央には不沈特火点に似た兵器がセットされていた。クロザワが近づくと、その兵器が反応を示し、ゆっくりと起動し始めた。
「こ、これは…」
クロザワはその光景を呆然と見つめた。戦艦オッシュは、単なる艦船ではなく、海中での戦闘において決定的な役割を果たすために設計された兵器であり、その中には、現在の技術では理解できないような高性能な兵器が搭載されていた。その兵器は、海中で圧倒的な力を発揮するために特化されており、その起動によって、この時代の戦局が一変する可能性があった。
クロザワは急いでその機械の操作を阻止しようとしたが、時すでに遅し。機械がフル稼働を始めると、瞬く間にその周囲の海水が異常に反応し、空気が震えるような力を持つ音波攻撃が放たれた。海面が裂け、爆発的な力が解放されると、周囲の港が一瞬で崩壊した。
その瞬間、クロザワは理解した。この戦艦が、もはや単なる兵器ではなく、歴史を変える力を持つ存在であり、彼が直面しているのは、過去と未来の衝突そのものであるということを。
決断の時
クロザワは戦艦オッシュの艦内で、もはや制御不能に陥った兵器と向き合いながら、冷徹に次の一手を考えた。もしこの兵器をこの時代で暴走させてしまうと、歴史そのものが大きく変わってしまうかもしれない。それはモロキューの戦争の流れ、そして彼自身の運命をも狂わせることになるだろう。
だが、クロザワにはただ一つ、避けて通れない選択があった。それは、この過去の戦艦を破壊し、この時代を元に戻すか、あるいはその力を利用して、現在の戦争を決定的に終わらせるか。
その選択が、クロザワ自身の、そして世界の運命を大きく左右することになる。
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