第25話 終わりの始まり
坊丸が再び手を染めたのは、ただのハッキングの枠を越えたところにあった。ヒヨス――それは単なる名前ではなく、実際には死をもたらす強力な毒薬だった。ヒヨスは、かつて坊丸がゲームやネットの裏で扱っていた“仮想の世界”とは違い、現実世界において命を奪う力を持つものだった。
その毒薬は、古くからの伝統的な使用方法を現代に適応させたもので、非常に少量でも致命的な影響を与える。かつては暗殺や密かな殺しに使われていたが、今や闇市場で取引されることもある非常に危険な物質だった。
ヒヨスを扱う者は限られており、その取引もまた秘密裏に行われていた。坊丸がヒヨスを手に入れた経緯は知られていないが、彼はその毒薬を使用する方法を密かに学び、その力を駆使していた。
毒の始まり
坊丸は、ヒヨスを使った計画を練り始めた。最初は単純な嫌がらせや脅しのために使うつもりだったが、次第にその欲望は膨らんでいった。ヒヨスが持つ殺傷能力に魅了された坊丸は、それを用いて自分の復讐を果たすことを考えた。
ある夜、彼は自分の元に届いたヒヨスの小瓶をじっと見つめた。その液体は無色透明で、どんな形にもなりうるが、触れることができれば、それはただちに致命的な作用を引き起こす。坊丸はその力を理解していた。ヒヨスは、ゲームの「支配」以上に、リアルな世界で自分を支配できる手段であると感じた。
計画の実行
坊丸は、自らの手を汚すことなく、ヒヨスを使う方法を選んだ。彼はまず、ターゲットとなる人物を慎重に選び、ヒヨスを仕込むべき場所を決めた。手始めに、かつて彼を裏切ったと感じていた者たち――その中には、過去に彼に嘘をついた友人や、彼を軽視した人間たちが含まれていた。
そして、ヒヨスをターゲットの飲み物や食べ物に忍ばせ、目をつけた者たちが消えるのを待った。坊丸は、それがどう作用するのかを冷静に観察していた。毒が効き始め、急速に体内で広がる感覚を味わっていた。
だが、計画を進める中で、彼の心に変化が訪れる。最初は単なる復讐のために始めたその行動が、次第に彼自身を覆い始める。
崩壊の瞬間
ヒヨスを使った計画が成功し、坊丸のターゲットが次々と倒れていった。しかし、最初の快感が徐々に恐怖に変わっていく。彼はついにその恐ろしさを実感した。ヒヨスの効き目は確かに強力で、いったん作用すれば、対象は一瞬で動けなくなり、最終的には死に至る。しかし、その殺傷能力を見ているうちに、坊丸は次第に自分自身がその結果にどう責任を取るべきかを考えるようになった。
その矢先、彼の最後のターゲットである人物が、偶然にも毒の影響を受ける前に警察に通報をしていた。坊丸の行動は、ついに警察の手に渡り、彼は追い詰められることになった。
最期の時
逃げ場がなくなった坊丸は、最後にヒヨスの小瓶を手に取ることを決めた。それは、彼がいかにしてこの計画を進め、そしてどこで間違ったのかを象徴するものだった。ヒヨスの力は確かに強力だったが、それを使い続けることがどれほど危険で無謀なことであったのかを、坊丸は最期の時に理解した。
警察に捕まった坊丸は、最終的に自らの行動が引き起こした悲劇に責任を取ることを決意する。しかし、彼の心にはもう、ゲームのような支配の欲求が残ることはなかった。ただ、過去の過ちを償うべく、死を選んだのだ。
警察によって拘束された彼が最後に吐いた言葉は、「すべてを壊したかった……だが、もう遅い」というものだった。ヒヨスを使ったその行動が、彼自身の破滅へと繋がった瞬間であった。
そして、坊丸はその命を終えることとなった。
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