ブラックメール?!

 薫はしばらくの間、ただ黙って歩き続けた。自分に向けられる視線には気づかないふりをする。もしかしたら、このまま進み続ければ……彼らも、魔法みたいに電話の内容を忘れてくれるかもしれない!


 直の鋭い視線が突き刺さる。

「……木漏れ日」


 霞が小さく首を傾げる。

「……木漏れ日くん?」


 ああ、もう分かった。そうか、そうか……彼はもう、完全に終わったのだ……。二度と名誉を回復することはできない。もう一度顔を見なくても分かる。どんな表情をされているかなんて、考えるまでもない。いっそこのまま崖から飛び降りて、白原さんの手間を省くべきかもしれない……。


 今すぐ死にたい気持ちは山々だが、なんとか踏みとどまり、無言を貫くことにする。


 沈黙が続く——長すぎる、そして耐え難い。しかし、やがて好奇心が勝り、そっと横目で彼女たちの様子をうかがう。


 直はまだ腕を組み、全力で疑いの目を向けていた。今すぐ警察に突き出すべきかどうか、本気で考えているかのような表情だ。


 霞は幸いにもそこまで疑ってはいないものの、どこか難しい問題に直面しているかのように首を傾げている。まるで、「木漏れ日くんって、本当に変態なのかな?」と真剣に考えているかのように。


 薫は深々とため息をついた。

「なあ……お前らが考えてるようなことじゃないから。あいつは、俺をからかってるだけなんだよ……」


「……それはつまり、どういうこと?」直の目がさらに細くなる。「木漏れ日、お前は自分の友達が適当な嘘をつくって言いたいの?」


 薫はこめかみを押さえながら呻く。

「その通りです! 俺は今すぐ新しい友達を探すべきだな……」


「はぁ? そもそも誰があんたの友達になりたいって?」


「は? 何それ?! 白原さん、あんたって本当に性格悪いな!」


 直は呆れたように目を細める。

「違うわ。私は"合理的"で"驚くほど知的"なの」


 霞が少しだけ戸惑ったように口を開く。

「……でも、木漏れ日くんって、そこまで悪い人じゃないと思うけど……?」


 薫は思わず足をもつれさせる。いやいや、やっとまともなことを言ってくれる人が現れた!


 感謝の言葉を伝えようとした瞬間、直が舌打ちをした。

「小笠原ちゃん、あんた甘すぎるわよ。こいつの本性を知らないからそんなことが言えるの。こいつは——」彼女は雑に薫の方向を指さす。「——害悪そのものよ。常習的な厄介者で、うちの部活にとっては完全なお荷物。今のうちに見限らないと、後悔するわよ?」


 霞は少し眉をひそめ、二人の間を見比べる。そして、静かに呟いた。

「でも……生徒会長の山崎さん、木漏れ日くんのこと好きなんじゃないの……?」


「はあ?」


 直の表情が一瞬で崩れる。眉をひそめ、口を半開きにして、まるで世界一バカげた話を聞いたかのような顔だった。


 霞は無邪気に瞬きをする。

「だって……そうじゃない? 彼と話してるし、他の人とはあまり話さないし……それに、なんというか……木漏れ日くんには他の人より優しくない……?」


 薫はこの会話が変な方向に進む前に止めたくてたまらない。

「小笠原さん、君は一体どんな妄想をしてるんだ? そんな理由じゃ——」


 だが、直が突然薫の方を向いた。その顔には、純粋な恐怖が浮かんでいた。まるで薫を初めて知るかのような、そんな視線だった。


「……木漏れ日。」


「……何だよ。」


 直の目が危険な光を帯びる。

「まさか……お前、本当に山崎詩織と何かあるんじゃないでしょうね?」


「"何か"って何だよ?! あるわけないだろ! ただの友達だって前に小笠原さんにも説明しただろ!」


「でも小笠原ちゃんの言うことも一理ある!」直が鋭く指を突きつける。「今思い返せば、山崎があんたに話しかける時の態度……それに、部活に入れるよう頼んできた時のこと……これは怪しい! いや、怪しすぎる!! まさか、あんた……彼女の弱みでも握ってるんじゃないでしょうね?」


 霞が息を呑む。

「木漏れ日くん、生徒会長を脅迫してるの……?」


「なぜそれが最初の発想なんだ?!」


 薫は顔を両手で覆い、どうしてこんな状況に陥ったのかを必死に考える。

「もういいから、このまま黙って山を下りさせてくれ……!」


 だが、下山は思ったよりも遅々として進まなかった。主な原因は——直が数歩ごとに立ち止まり、薫を尋問しようとするからである。返答しなければ、道から突き落とされる危険がある。なぜか、沈黙=罪の確定という謎のルールが適用されているのだった。

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