第92話

なんなのよ、その笑みは……。



決して、若い女がするような表情ではない。



……80歳を越えた老人に見えた。




「桜っ」



「有料のレジ袋はいりますか?」




袋!!


持ってくるの忘れた!!




「いる」



「はい、4円になりますね」




そう言って、レジに打ち込んだ商品を入れていく桜竜。




「桜」



「大地」



「ん?」



「ここにはもう来ないでって言いたいけど、あたしにそんな権利はないから」




そうだな、何言ってんだか。


ここはコンビニで、誰が来てもいいのだ。




「来るなら17時過ぎにして。あたしは居ないから」




もう本当会う気がないようだ。


真っ直ぐ大地を見る瞳がそう強く物語ってる。





そこまで……コイツらが嫌いだって言うの!?




「桜竜ちゃ」



「ありがとうございます。1296円になります」



「あっ、ああ」




まだ払ってなかった。




「はい」




財布を出そうとしたら、大地が払ってくれる。




「サンキュー、お母さん」



「誰がお母さんだ」



「ふふ。2千円お預かりします」




あたし達の会話に楽しそうに桜竜が笑った。


その笑顔は年相応で。



……そんな笑顔も出来るんじゃん。




「704円のお返しです」




大地にお釣りが渡され、あたしには綺麗に袋に納められた商品が。



やるな、仕事が早いわ。




「桜」



「ありがとうございました」




有無を言わさず、桜竜は完璧な作り笑顔でそう言うと深々と頭を下げた。




さっさと出ていけ、と。




「ちょっと」




あたしは良いとして、気にかけてくれてる大地になんて態度よっ。




「美己、行くぞ」




フゥ……と息を吐き踵を返す大地。




「大地!!って、ちょっコラッ!!おまっ、おいっっ」




桜竜に叫ぶも、アイツはずっと頭を下げたままだった。



そしてあたしは首根っこを掴まれ、外に連れ出されたのだった。





まだ、アイツのこと何もわかってないのによーっ!!




「痛っ!!蹴んなっ!!」

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