第91話

焔を見つけられず、どこか悲しげでホッとした様子の女。



……なんなの。


イライラする。




「昨日はお世話になりました」




あたしのことは無視して、女は大地に頭を下げる。



昨日?


なんのこと?



昨日といえば、あたしはバイクを走らせまくり帰ったのは0時過ぎ。



あたしが居ない間に何があったと!?




「大っっ」



「こちらこそ、大学いもをありがとう。美味しかったね」




大学いも!?


マジでなんの話をしてんの!?



勢い削がれたあたしは大地を睨むも、大地は女を見て柔らかく笑ってる。



志郎や焔とは違って、女には優しい大地。



けれど、その笑みは家族、もしくは心を許した仲間だけに見せるもので。



この女には心を許してるっていうの?



焔が選んだから?




そんなのっ



大学いもの話でちょっとだけ女が笑う。




「桜竜ちゃん」




そうそんな名前だった。


変な名前。



名を呼ばれ大地を見る桜竜。



……瞳は濁っていない。



そこは認めてあげなくもない。



大地はしっかりと桜竜を見て




「何か困ったことがあったら、焔……には言えなくても俺には言ってよ。力になれることがあれば力になる」



「ハァ!?」



「美己うるさい」




いやいやいや、何言っちゃってんの大地!



コイツは焔をフッたっっ




「それは出来ないよ、大地」




静かに首を振り、キッパリと言い切った桜竜。



へぇ……。


常識くらいはある……




「……」




桜竜の表情を見て、おもわず目を見開く。



桜竜は……



疲れきり、全てを諦めたような笑みを浮かべていた。

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