第77話

っっ。



温かい手が離れる、それがこんなにも心細いとは……。



唇を噛む。



こうなるから嫌だったんだ。



人の温かさなんて知りたくなかっ




「ひょあっ!?」



「ああ、悪い。冷たかったか?」




変な声が出たあたしを心配そうに見てくる進藤。



冷たかったというか、ビックリした。




何か手に塗られた。



それは……




「ハンドクリーム?」




だった。



それを進藤は丁寧に優しく、あたしの手に広げ塗り込んでいく。



……どこからそんなもの、とテーブルを見るとさっきのスーパーの袋が置かれてる。



進藤も何かを買っていた。



もしかして買ったのって……これ?



あたしのために……?




「進」



「すっげぇ頑張ってる手だ」



「っっ」



「こんなに小さな手をここまで痛めて、桜竜は頑張ってる」




囁くようにそう言った進藤は最後までハンドクリームを塗り込んでくれて、仕上げとばかりに指先にキスをする。




「!!」




クスクスと何度も嗤われた。



汚い手と言われてきた。




それをこの人は頑張ってるって……。




ポツッ。



進藤の手に雫が1つ落ちる。




「??桜……!?」




進藤の綺麗な漆黒の瞳があたしを見て大きく見開かれる。




「進藤……?」




どうしたの?と言う前に抱きしめられた。




キツく強く。




「泣くな。桜竜、泣くな」




言われて気付く。



あたし……泣いてるわ。




次々と溢れる涙が進藤の服を濡らしていく。



離れなきゃと思うのに、体は言うことを聞いてくれなくて……。



今日だけ……今日だけ。




何度もそう言い聞かせた。



涙が止まるまで、進藤はずっと抱きしめてくれていた。

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