第76話

「うぉいうぉい。どこに行くのかな?桜竜ちゃん」



「ぐぇえっ」




寒いので前をしっかりしめたコートの後ろ、首の所を掴み引っ張られ首が絞まる。



一瞬息が止まる。




……コイツ、殺す気か?



無言で睨めば




「悪い悪い」




そう言って、コートは離してくれたけど、その手で今度はあたしの右手首を握ってきた。




「朝早いから」




帰してくれと頼むも




「すぐ終わる」




そのままソファーに連行される。



そして座り心地の良すぎるソファーに座らされ、その横に座った進藤があたしの両手を取ると自分の両手で包んできた。



??



進藤はこんな手を握って楽しいのか?



こんな……もうアカギレだらけで汚いこんな手を。




コンビニで……同い年くらいの女の子の手を見ては……情けなくて空しかった。



お釣りを渡すときに手を見せるのが恥ずかしかった。



あたしも普通の家に産まれてきてれば今頃……そう何度思ったことか。



思っても仕方ないのにね。




諦めて笑うあたしを




「桜竜」




進藤が低く力強い声で呼ぶ。




その表情はとても真剣で




「……何?」




何を言われるのか……少し怖くなってしまい、問いかける声がほんの少しだけ小さく震えた。




進藤の手が離れていく。

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