第75話

楽しい時間が、あっという間っていうのは本当だったんだ。



進藤と大地と食べるご飯は、あっという間で。



進藤はあたしが作った、卵が所々焦げているオムライスを"美味しい!美味しい!"と食べてくれた。



自分の作った料理を人に食べてもらえて、しかも美味しいと言ってもらえる、それはこんなにも嬉しいことなんだな。



たくさん知った初めての気持ち。



この気持ちだけで、もう少しだけ頑張れそうだ。




大学いもも3人で食べた。


安物なのに、大地も喜んでくれた。




当たり前だけど、母親の作ってくれたものとは味が違っていて……。



それが悲しいのか……嬉しいのか……わからなかった。




壁に掛けられた時計を見ると23時を廻っている。



明日も仕事だからもう帰って寝なければ。


食べなくても寝なくても、人は倒れるのだ。



何回かやらかしてるからわかる。



倒れてる時間がもったいない。




手伝わせてもらった片付けもすんで、帰り支度をする……と言っても、あのうっっすいコートを着るだけなのだけれど。




大地はケータイを持ってリビングを出ていった。




「あっ。桜竜っ」



「ん?」




進藤に呼び止められる。




「ちょっとココにお座り下さい」



「なんで敬語?」




ポンポンと真っ白なソファーを叩く進藤。




「でも……」



「桜竜」




切れ長の瞳が真っ直ぐ、あたしを射抜く。




あ……これはダメだわ。


こうなった進藤は言うことを聞くまで動かないわ。



短い付き合いで学んだことの1つ。




うん、好都合。



あたしはコートを着ると




「ご馳走でした。お邪魔しました」




挨拶をして退散しようとした……




















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