第63話

「……クッ」



「!?」




笑っっ笑われた!!



ぬぐぅうううううっ。




「バイト終わりだもんな。腹も減るよ」



「うっ……」



「桜竜ちゃん、腹減ってんのか!!」



「大地!?」




大地が笑顔で戻ってきた。




ぐぅうっ。



減ってるよ!!



ああ、減ってるともさっ。



珍しくグッスリ眠れて、珍しくこんなにお腹が減った。




「お前、鍵は……」




嫌そうに進藤が聞く。



そうだ、確か鍵が掛けられてたはず。




「バカめっ。誰の家だと思ってんだ」




指でクルクルとこの部屋の鍵らしきものを回す大地。



大地の家だったのか。


てっきり進藤の家だとばかり。




「ちょうど良かった。俺も腹減ったんで、飯食いに行こうって誘いに来たんだ」



「おっ、良いな。どこか美味しいところにでも行こ」



「行かない」




進藤の言葉を遮り首を横に振る。




「「え??」」




キョトンとする二人。



何やら申し訳ないが、仕方がない。



だってそんな贅沢をするお金なんてあたしは持ち合わせていない。


いや、いつもないんだけど……。



でもそれを言うのは恥ずかしくて……




「あたしはもう帰るから」



「桜竜?」



「桜竜ちゃん?なんで?一緒に食べようよ」




嫌々するように首を横に振る。




「金の心配ならいらねぇぞ。俺が出すから」



「…………」




進藤にそう言われる。



バレた……。



恥ずかしいやら施しを受けなければ、ご飯も食べに行けない自分が情けなくて……。




「奢られたくないから行かない」



「桜竜っ!!」



「あたしは貧乏でお金もないけど、施しは受けない」




ひねくれてると思われるだろうけど。



奢られてしまったら、次も?次も?と期待してしまうかもしれない。



そんな卑しい自分には絶対になりたくない。




「施しなんてそんなこと思ってねぇ!!俺はっ」




わかってる。



少しだけど、進藤のことを知って、そんなことを思う奴じゃないって。


わかってるよ。



だからあたしは笑って




「ごめん、これはあたしの気持ちの問題」

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