第38話

とっさに箱を後ろに隠すも奪われてしまう。





「返してっ!!」




それを取り返そうとするも




「返してだぁ?」




男の眉が凶悪に跳ね上がる。




マズい、と思ったが遅く……。




男はケーキの箱を地面に叩きつけた。




そして




「止めてっっ」




叫び虚しく、グシャッと箱ごと踏みつけられるケーキ。




「っっ」




潰れたケーキを茫然と見ていたら、グイッと顎を持ち上げられ無理やり上を向かされる。




「お前にこんなケーキ買う金があんのか?ああ?んな金があるなら借金返せや、クソが」




憎々しげに睨み付けられる。




「…………」



「胸クソ悪ぃ」




バッと顔から手が放された。




「っっ」




その時に男の爪が顔を引っ掻きピリッと痛みが走る。




「突っ立ってんじゃねぇよ。早く金持ってこい」



「…………」




家の鍵を開け、押し入れにしまっていた封筒を取り出してきて男に渡す。




それは今日入ったばかりのコンビニの1ヶ月分の給料。




男は中を確認すると




「チッ。少ねぇな」




そう言い捨て、中から一万円を取り出し渡してくる。




「じゃあな。次は5日後か」




男が去っていく。




5日後、それは"flower"の給料日。



一万円をポケットにしまい、グチャクチャになったケーキと箱の前にしゃがむ。





「ごめん……ね」




つい出た言葉はケーキにだろうか、進藤にだろうか……。




ポツ……。




流れる涙そのままにケーキを片付け家の中に入った。

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