第37話
……そうだった。
……忘れていた。
今日は"あの日"だった。
どうして忘れていたんだろう。
「何してる。早く来い」
いつまでたってもその場から動かないあたしにイライラした様子で男が言う。
男は短気で、言うことを聞かないとすぐに手が出る。
あたしは只でさえ無表情を更に無表情にして男に近付く。
ケーキを持つ手が寒さではなく震えているのを見ないふりをして。
……進藤は。
ふと思う。
いつ出てくるかもわからないあたしを、この寒さの中、待っていてくれたんだと。
酷いことを言ったのに、それでも待っていてくれた。
暖かい飲み物を……肉まんを……薬をくれた。
頑張ったご褒美だとケーキもくれた。
……進藤。
ガッ!!
「っっ」
男の目の前まで来た所で頬を掴まれ、容赦なく潰される。
「遅ぇ。俺を待たせるんじゃねぇよ」
「…………」
強くなる力に痛みを堪える。
この男の前で声を上げるのは絶対に嫌だった、でも。
痛みで目に涙が浮かぶのは止められず、それを見た男は満足げに笑うとあたしから手を離し……。
あたしが持つケーキの箱へと目を向けた。
……ダメ!!
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