第23話

「大丈夫か?」




そう言って男は背中を擦ってくれる。



何度も何度も。




「……ふぅ」




落ち着いてきた。




「ごめん。ありがとう」



「落ち着いたか?」



「うん」



「よし、ならこれで口をゆすげ」




男は持っていたナイロン袋からミネラルウォーターを出して渡してきた。




「いや……でも」



「いいから」



「ありがとう」




正直、咳をしすぎて喉が痛い。


口の中もカラカラだ。



ありがたく受け取り口をゆすげば少し楽になった。




「ゆすいだか?」



「うん」



「じゃあ次はコレだ」




今度はホットレモンのペットボトルが。




「…………」



「心配するな。毒は入ってねぇ」



「いや、そんな心配はしてない」




何を言ってるんだろう、この男は。



毒気を抜かれ、ホットレモンを受け取る。




冷えた手には熱いぐらいだ。




「あったかい」




ポロっと出た言葉に男は笑った。




「熱い内に飲め。てかなんで外に出るのにそんな薄着なんだ、バカなのか」




昨日のもだったなと言われる。



よく見てる。




「……バカじゃないし」




……これしかないんだし。



とは言いたくない。




男は自分の着ているダウンジャケットを脱いであたしに掛けた。




「これ着とけ。見てるこっちが寒い」



「いらない。あんたが寒くなるでしょ。あたしは寒いのには慣れ……」



「心配すんな」




何回言うんだ、それ。




「俺はカイロを大量に貼ってるから寒くねぇ」





いや震えてるよ??




「でも」



「いいから着ろ」



「っっ」




有無を言わせぬ声と瞳に渋々着る。













……決して怖かったわけではない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る