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「僕がパンを食べたのは、いつ以来かな?」

私を可哀想な目で見ていたのは、こんな私にも分かった。

「きっと、もしかしたら数年ぶりかも。」

まるで、取り返しのつかない病気になった人を見ているかのよう。うっすらと、私と関わる事を避けていた。上辺だけ。

「おいしいね、久しぶりに食べてみると。」

そう言いながら、皿に残ったパン屑を、汚らしい物を見る目つきで見ていた。乙部おとべさんは、潔癖症なのだ。昔も空気が臭いとか言って、この街の事を嫌がっていたから、そうに違いない。

「もう、そろそろ行かなきゃ。」

その時の乙部さんからは、今すぐにでも帰りたいオーラが漏れ出ていた。この街の喫茶店。スパゲッティも、そこにセットでついてくるパンも。なんとなく不味そうに食べていた事を覚えている。綺麗なスーツ。電車の広告で見かける男の人のように。整えられた印象は昔とは全然違って、まさに都会の中に溶け込んでしまった感じ。

「じゃあね、また。」

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