第4話 出会いと別れ
その日 学校が終わるのと同じタイミングで家に帰った、
どうやら家から夕飯の作っている匂いがするから多分 母さんが帰ってきているだろう
「プクボンちょっとココに隠れてて」
胸ポケットを広げてそこに入る様に促すと嬉しそうにポケットの中に納まってくれた、
「ただいま」
「……お帰り」
微妙な間の後に返事が帰って来た、昨日の今日じゃ無理もない
「あ、あのね」
「あ!昨日の事なら気にしないで」
そう言って言葉を遮るように自分の部屋へと逃げ込んだ、
買って来た荷物を整理していると少しだけどワクワクする気持ちと不安な気持ちが入り混じる不思議な感覚がした、変わるかもしれない現状それはプラスなのかマイナスなのかわからない、今は分かっていることは今までの空間が別物とへと変わっていく現実だけ…
そんな現実とわかれる前に僕は机に座り、書かなければならない手紙を書いた、
両親へ
その後、父が帰って来て夕飯となった
気まずい感じの中、昨日の件を早々に感情的になっていたのでと謝り、
その後両親からいろいろ言われたが極力感情的にならないように受け流し
なるべくいつもと変わらないように接し、そして心配しないようにとだけ言ったが
両親の方が感情的になってきたので早々に食事を済まして自分の部屋へと戻った。
そして、机に両親への手紙を置いてベッドにはいった。
ふよふよと僕の近くに飛んできたプクボンにこう言った
「明日は早いからもう寝ようね」
はじめて故郷を出た、
縛られていたものから解放された喜びと
まるで安全を確保する紐も着けずに崖を降りるような不安が
襲ってくる、天国か地獄かまだわからない。
そんな不安を抱えながら馬車は青い空と緑の生い茂る綺麗な森を抜けていく、
やがて大きな町を抜けると乗合の馬車から人はほとんど降りて残って居るのはフードを頭から被った僕と同じくらいの子だ、きっとあの子も管理人なるんだろう
「ちょっとそこで休憩にしますので」
麓にある小さな町の茶屋で休憩するようだ、
せっかくだから声でもかけてみようかな
これから一緒に試験受けるわけだし
「あの、君も講習を受けに行くの?」
「ええ」
「僕もそうなんだ」
「あら、そうなのね……でもあまり話しかけないでくれる?」
その目はこれ以上 自分の領域に入らないでほしいという雰囲気を出している、
「あ、ごめん」
まるで全てを拒否するかのようなそんな雰囲気を醸し出している、
よく考えれば山小屋の管理人になることになってしまったんだ、
気持ち的にやるせない、平常心でいられないことは
理解できるしこれ以上 話しても逆効果だと思いお互い距離を取り時間が過ぎるのを
待った。
暫らくして休憩が終わり馬車が動き出した、
町から離れ少し寂しい感じがする細い道が続き
日も落ちてきた
ぼんやりと寂しさを感じながらぼ~っと外を見ていると
それまでバッグの中でおとなしくしていたプクボンふらふらっと出てきて
一点を見ている
すると、バック中の道具屋でサービスでもらった四角いガラス板が光だした、
イ…ル…
女性の様な声が頭に響く
「プクボンなのか」
プクボンは一点を見つめたまま動かない、
おじさんが言っていたことがほんとならプクボンが危険を知らせてくれている
「おじさん!この先に何か敵が居るって僕の獣が知らせています」
「なんだって?本当か」
本当かどうかはわからなかったが、プクボンが言ってるなら
それを疑うことなど無い
「あっちの方角です」
すると一緒に乗っていた子が
「あっちね・・・」
槍の先が斧の様になっているハルバートという武器を構え
「俊映」
一瞬でプクボンが見ている方向の草むらへと移動し
「こいつか」
ズドン!
なにか激しい音が響き草むらから何かを引きずって戻ってきた、
そこには大柄な男が斧を持ったまま気絶していた。
「こいつはすごいな」
おじさんも関心している
「ほんとに凄いです」
関心していると、プクボンがまた一点を見つめ
マダ……
「え?」
プクボンは草むらの上の方を見ている
まさか、まだ後ろに!
もし、本当ならあの子があぶない!
何かないかこんな時に役立つスキルもない
だけど、普通のことなら出来るんだ
俺は目の前の石を拾いあげてプクボンの教えてくれた方向へ投げつける
「え?」
なんで急に石を投げられたのか驚く子の後ろで
「ちっ」
細身の男が木の上から下りてきて仲間を救出するために斬りかかる
「後ろ!!!」
俺が叫ぶと
「まだ、居たのね」
相手の攻撃を避けハルバートの柄の部分で腹へ打ち込むと男はそのまま倒れこんだ、
その時、フードがはずれて顔が見えた
青緑の短い髪に色白な肌、どこか幼さが残る少女だった。
「女の子?」
「そうよ?あなたのおかげで助かったわ」
「いや、僕は何も」
「あんたが教えてくれていなかったら奇襲を受けていたわ」
「この子のおかげだよ」
そういってプクボンを見せると
「可愛い…」
じーっとプクボンを見つめる
怖さを感じたのかバックに退避してしまった。
「あら…そうだあいつらの戦利品よ」
そう言って何かカードの様なものを投げてきた、そして彼女は再びフードをつけて馬車に戻ってしまい、それから何度かしゃべりかけてみたもののそれ以降しゃべってはくれなかった。
無言のまま時は経ち、いつのまにか空の青空が赤く染まり、
周りの景色もいつのまにか少し寂しい林道になっている。
「そろそろですよ」
こんな所に研修所があるのだろうかと思っていると、
目の前に少し切り開かれたところがあり、木の柵で囲われた建物が幾つか並ぶ集落が観えてきた。
「あれが研修所兼山小屋の本部となります」
集落の中に入ると最低限のお店や簡素な飲食店もあり意外に人も多くちょっとした村の様な感じに見える。
その中で一際大きな建物が集落の中央に建っている、建物自体は良く掃除がされていて明るい感じではあるが、本部というよりも大きな宿泊所のようなイメージだ。
「ここが終点です、それではお疲れ様です」
俺達を降ろすと馬車はそそくさと帰って行ってしまった。
「なんか緊張しますね」
「……そう?早くいきましょう」
久しぶりに聞いたフードの子の声だったが、それ以降はしゃべることもなく
本部の入り口まで行き、そそくさと呼び鈴を鳴らした。
すると中から髭を蓄えた大柄な男が出て来た。
「いらっしゃい、宿泊かい?」
中年の少し小太りでひげを蓄えた男が出迎えた
その顔は笑顔でもなく、かといって仏頂面でもない何といったらいいのか
不自然な位感情がない普通の顔といったらいいのか、
「いえ、研修で」
「僕もです」
すると急に顔からお面が外れたかのように表情が一変に、
面倒な奴等が来たと言わんばかりに顔を曇らせる。
「なんだ、研修の奴らか それじゃあ各自部屋を指定するからそこへ行け」
「はい」
「はい」
「あと、ここでのお喋りは禁止だ」
「え?」
「黙って部屋に入れ」
「喋るのが禁止?」
「ああ、わかったらさっさと部屋に行け」
そういうとぶっきら棒に部屋の鍵を投げてきた。
「研修内容はあとで各自の部屋に説明しに行く」
そういうと部屋の奥へと行ってしまった。
「喋るなって一体……」
そう呟いたがフードの子は反応することもなく荷物を持ち自分の部屋へと歩いて行った。
「お前もとっと行け」
「はい…」
反論も許されないような強い口調で不安な気持ちを強くしながら
指さされた部屋へと入室した。
部屋は小さな窓と最低限の机とベッドが置かれていた、
とりあえずここから始まるのかと感じながら荷物を置いて座ろうとした瞬間、
「荷物を置くんじゃねえ、汚れるだろ」
「え?」
「ココはお前の部屋じゃ無い」
そこには先ほど男がいつの間にかドアを開けてこちらを睨みつけていた。
「どういうことですか?研修があると聞いたのですが」
「ああ、研修はある」
「?」
「今から説明してやる、良いか山小屋の管理人ってのは基本的に一人で全てを自分でやらなきゃいけねえ」
「はい」
「今回の研修はそれを実際に体験してもらう」
「体験ですか?」
「ああ、今からお前をどこかの山へ転移させる」
「え?」
「お前にはこのコンパスとこの山の加護を使ってここまで戻ってこい」
「山の加護?」
「山小屋の管理人は山の神を信仰する者であり、そして山の神に愛される者でなければならないという言葉があるんだが、まあ そんな事は建前でこの護符があれば大抵の攻撃や妨害から身を守ることができる」
「そんなモノが」
「山小屋の管理人の唯一の特権だ、野党やモンスターが襲ってきても身を守ることができ一人でも自営出来るのはこれのお蔭だ」
「そうなんですね」
「ただ、守ることだけしか出来ないから そこからどうするかは己次第だがな」
「……」
「そしたら指を出せ」
「指?」
「この護符にお前の血を垂らして盟約とするんだ」
そう言って男は無地の白い長方形の紙と懐からナイフを取り出した、
雰囲気も相まってこれからそのナイフで刺されるんじゃないかと思ってしまうような感じだ。
「自分でやるか?」
そう言ってナイフをこちらに向けて来たので無言で頷きそれを受け取った、
どうせやるなら自分でやった方がマシな様な気がして
受け取ったナイフで親指の先を少し斬り札に血を当てると白い札に蔦のような緑の線が四方八方に広がり綺麗な絵画のようになっていった。
「綺麗ですね」
「それでお前に森で危害が加えようとする者からある程度は守ってくれるが、過信はするなよ」
「はい」
「あと、これがコンパスだ」
そういって渡されたのは銀色の円筒を輪切りにしたような透明な容器の中に
緑色の三角の細いモノが入っている。
「このコンパスは常にココを指す様に作られている、お前はソレを頼りに戻ってくるそれだけだ」
「えっと」
「内容は以上だ、では行って来い」
そういうと男は赤い札を手にした
「え?」
「これは緊急用の札だ、どこに飛んで行くかはわからんが近いことを祈るんだな」
そういって札を僕の足元に叩きつけた、
すると同時に目が開けられないくらいの発光が辺りを包み思わず目を閉じた
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