第7話【宇宙】vs【大海】

「やっと見つけたぞ…!」

(よく見つけたね。あれから二日経ってるけどw)

われは話がしたいのだ。」

(そう。興味ないけど。)


 面倒だ。


 わしは魔法少女が好きではない。相手になどしたくない。しかし、こうしてこちらの世界に居る限り奴等はちょっかいをかけてくる。普段は魔法少女を避けるため、我々と似たような心を持ち自我が強い生命体の少ない海中で静かに勢力の拡大に励んでいるわけなのだが、今回はどうしてもやらなければならない仕事があるのだ。世界征服である。といっても武力で制圧するというわけではない。仲間を増やして適当な場所に送り込む。それだけで人間の脆弱な魂は我々に対抗することが難しくなる。

 しかし、この計画の障壁となるのが自ら人間に汚染されに行く異常者集団、魔法少女である。奴等の人間と契約するという行為は未だに理解に苦しむ。

 今回も前と同じく、わしの能力である【空想水層】を発動させる。不完全とはいえ物質の肉体を持った魔法少女に耐えられる代物ではない。と、思っていたのに。


「残念だな!今のわれはみなみのうお座の大吉だ!強運のわれに勝てるものなどいない!」


 対策されていたか。しかし、今やつが口走ったセリフから察するに、運勢が深く関わる能力らしい。わしの観察眼を舐めるな。どれほど他人を観察してきたことか。快適に暮らすためとはいえ好きでもない我儘な奴等を相手に会話するだけでも疲れるというのにそれを何人も。魂の色が似ている奴等だからある程度の時間話していてもこちらに影響が来ることは殆どなかったが、それはそれとして大変な作業なのは事実なのだ。


(運に頼らないと戦えないみたいだね)

「な、われは常に運に恵まれているのだ!」


 しかし、自在に動けるだけでフィジカルはこちらのほうが上なのは変わらない。圧力が効かないのなら別の手段を使うのみ。


 次の瞬間、わしは自分のスライム状の肉体をクラゲ型から回遊魚型へと変形させ、1秒後には口吻の先端が相手の長い髪の一房に触れた。このまま貫いてしまおうと本気を出した。しかし何故かその1秒後も空気の感触しか感じられなかった。

 肉体を再びクラゲ型に戻す。そして周囲を確認する。魔法少女はこの近くにはいないと感覚が告げる。錯覚を見せる能力があったらすでに何処かのタイミングで使用しているだろう。しかし、この結果はありえない。


 そう思っていたその時、わしの身体に、穴が開いた。


「何がなんだかわからないが、これが大吉の力なのか…!」


 上を見ると、先程まで地面でおしゃべりしているだけの存在だった魔法少女が空中浮遊をしているではないか。いや、これは空中浮遊ではなさそうだ。どちらかといえばわしと同じくしていると表現したほうが良さそうだ。

 ますます厄介なことになった。こんなところで長時間戦うなど御免だが、相手は自分と同じ機動力を獲得してしまった。つまり、わしのアドバンテージが失われつつあるということだ。この成長性、危険かもしれない。この戦いのゴールを魔法少女を撒くことから目の前の脅威を抹殺することに設定し直した。


つづく

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