第6話【氷河】と【深海】の襲来

 ぼくが新たな魔法少女クロを誕生させたことで一時期は注目されたが、それ以降は更に別の魔法少女リオンが現れたことにより、話題はそちらに移っていった。ぼくはそもそも魔法少女が好きなのだ。彼女の活躍もこの目で確認してみたいと思った。


「今そんなこと考えてる場合じゃないでしょ!」


 おっと。説教されてしまった。まあ、この場合はぼくが全面的に悪いのだが。なぜなら、今のぼく達は怪物と戦っている最中なのだ。回想するほどの出来事でもない。いきなり二体の怪物が近所にやってきて、そのうちの一体がこの場に残り、侵略を始めた。それだけのことだ。このようなことはもはや日常茶飯事である。


 背面に鏡を置き、敵に背を向ける姿勢を取る。次の瞬間、一面の氷が溶ける。再び凍らせようとするが、うまくいかない。景色が鏡に写っている限り、鏡面に氷が写ることはない。先程からずっとこうして相手の能力を封じ続けている。相手は二日前に群馬県で確認されてから徐々に南下し、この場所にやってきたようだ。能力の対策などいくらでも出来た。


(地味にうざいことしかしねーな、てめーは!)

「うるさいよ!そんなこともう分かってるから!」


 彼女クロは地味と言われることが気に入らないようだ。確かに、今までの魔法少女達と比べても華がないと言われても仕方がない絵面だが、ぼく的には魔法少女がこうして戦っているのを間近で眺めていられるだけで幸せなので、余り気にしていない。

 大体、確実に仕留めることも重要なのだ。前回第2話のように街中で派手に暴れ回られるよりも閑静な住宅街を閑静なままに戦うのもまた、趣深いというものなのだ。と、テレパシーで伝えてみる。


「まあ、加賀美くんが見てくれるだけマシ、なのかな…。」


 どうしても目立ちたいらしい。それでも近くに現れた怪物に全力になれるところも好ましいと感じる。やはり彼女とは気が合うようだ。

 それにしても、もう一体の怪物は何処へ行ってしまったのだろう。こうしている間にも世界各地で怪物たちが暴れまわっている。多くの個体は魔法少女達に及ばないとはいえ、絶対的な数が足りないのも考えものか。しかし、ぼくに出来ることも少ない。SNSをやっているわけでもないし、そもそもすべてを説明したうえで相性の良い魂同士を結びつけるようなことなど都合良く出来るわけがない。魔法少女の人数が少ないのも納得だ。今はただ、地道にやっていくしかないのだろう。ぼくは目の前の敵に集中するのだった。




「やっと見つけたぞ…!」

(よく見つけたね。あれから二日経ってるけどw)

われは話がしたいのだ。」

(そう。興味ないけど。)


 前回第5話は負けてしまったが、今回こそはせめて互角に立ち回らなければ。リオンは気を引き締めるのだった。


つづく

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