伝わる人にはたまらない、純度高めなFPS小説!
- ★★★ Excellent!!!
弱冠13歳で人気FPS【FLOW】の初代世界王者となり、さらにプロゲーマーになるもある理由で引退した八神翔。時は流れ18歳となった翔はかつての相棒を誘い世界大会で華々しくカムバックしようとするのだが、間違って練習用のサブアカウントを使ってしまったために、予選で異常な成績を叩き出した謎の新人として世界中から注目を集めることに……。
物語の冒頭から細かい前置きなどはなしでいきなり大会が始まるぐらい、ゲームプレイの様子がメインとなっており、ここまでゲームの内容ばかりクローズアップした作品はなかなか珍しい。元世界王者だけあってスモーク越しに敵を撃ち抜いたり、相手が立てた音だけで居場所を完全に見極めたりと数々のスーパープレイを次々にお披露目していく翔だが、【FLOW】の元ネタとなっているゲームが何なのかわかりやすく描かれているだけに、元ネタのゲームをプレイしたことのある人にはより臨場感が伝わることだろう。
またVtuberとしてスカウトされて同期のメンバーと一緒にゲームをプレイする際のわちゃわちゃ感や、プロを引退することとなった過去の因縁のエピソードなども挟まれておりそちらも読みやすくリーダビリティが高い。だがメインになっているのはやはりゲーム中の対戦描写。某FPSをプレイしたことがある人にはぜひ読んでもらいたい。
(「スポーツの秋! スポーツ小説特集!」4選/文=柿崎憲)