様々の独特な角度から切り込む、万人向け新感覚現代ダークファンタジー

とにかく一味違う。今まで読んだどの現代ファンタジー作品とも似ていない、新しい試みだと言えるでしょう。かと言ってこの作品は決して異色ではなく、むしろ読みやすくて誰にもおすすめできます。

現代ファンタジー作品の世界観の多くはただダンジョンが現れた現代社会でほとんどの人の生活はあんま変わらない。もしくは文明が崩壊したポストアポカリプス。大体この極端な2パターンに分かれると思います。でもこの作品その間にあります。ダンジョンの出現によって相当な打撃を受けるが、少なくとも主人公が住む日本ではネットや掲示板がまだ使えるくらいに、文明が大きく後退していません。その絶妙な舞台設定で、物語を包む薄暗い雰囲気を作り上げました。最初から崖の下に突き落とされるのではなく、底がない穴に少しずつ降りるような、漠然な不安と緩やかな絶望ですね。

そして、冒頭から月の超古代遺跡が出てくるし、SFに通ずる背景設定もあります。ネタバレになるので詳しく語れませんが、接点がないように思える社会全体や政治関係の話に発展します。そこもユニークだと思います。

最後に特筆すべきのは、登場人物の心境の描写でしょうか。特に主人公の精神的未熟さや、復讐に囚われて視野が狭いなど、良くないところに対する描写が素晴らしいです。途中で主人公の心を抉る展開を経て、痛みから来る精神の成長の過程が鮮明に語られます。そんな内面的変化の描写を重要視するところもなかなか珍しいかなと思います。

その他のおすすめレビュー

海の向こうからのエレジーさんの他のおすすめレビュー502