世界は、まだ牙を剥いでいる
地上へと続く階段を登りきったとき、アレクとユリゼルの目に飛び込んできたのは――**焼け落ちた村の跡地**だった。
「……これは……!」
ユリゼルの顔から血の気が引く。かつてアレクが訪れたことのある小さな集落。冒険者や旅人がダンジョンの噂を求めて立ち寄る、穏やかな場所だった。
だが今は、炭となった木々と崩れた石垣が残骸のように転がり、空には紫黒い煙が立ち昇っていた。
「遅かった、か……?」
アレクのつぶやきに、周囲の空気が急に冷たくなった。風が止み、音が消える。次の瞬間、**背後の空間が“裂けた”。**
「下等存在の干渉を確認――管理単位を再定義、標的を選別。優先対象:《理干渉者》を排除せよ。」
聞こえたのは、金属を擦り合わせたような無機質な声。裂け目の奥から現れたのは、**機械と魔術が融合した異形の兵士たち**――《管理者兵団(エグゼキューターズ)》だった。
「……お前ら、管理層か。」
アレクの眉がわずかに動く。
この世界の最奥に潜む『理』そのものを維持・調整する存在。それはSSランク世界においてすら、\*\*“挑む対象”ではなく“避けるべき災厄”\*\*とされる。
だが――
「来るなら、まとめて来いよ。“好都合”でまとめて片づけてやる。」
アレクは一歩、前へと踏み出した。足元にひびが走り、空気が震える。
ユリゼルが息を呑んだ。アレクの周囲に、目に見えない何かが発生している。
――“世界の理”が、彼の都合に合わせて**再定義**されていく感覚。
(また始まる。この世界の常識を覆す、あの戦いが。)
ユリゼルは背を預けるようにしてアレクの後ろに立ち、自らの精霊力を高めていく。
「私も、全力で援護するわ。あなたの“好都合”がどこまで通じるか――この世界に見せてあげましょう。」
空が鳴った。雷鳴にも似たその音は、始まりの合図だった。
**SSランク世界の管理層と、“異物”となった好都合のスキル保持者がぶつかる時、世界はその構造ごと揺らぎ始める。**
次なる戦場は、「理そのもの」。
勝利とはすなわち――**この世界を“都合よく”再定義できるかどうか。**
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