第32話あれから
さわさわと心地良い風が髪をさらっていく。
「ふふ…なんて懐かしい…。」
ここはイタリア。
そして私の手元にあるのはとある一冊のアルバム。
イヴ君から全然ときめかないお誘いを受けて高校を卒業した私はそのままイタリアにやってきた。
大変だった数年もあっという間にすぎて今ではもう、ここにお世話になって七年が経とうとしている。
明日はイヴ君のボス就任式だ。
レ「杏〜?あら、ここにいたの?探したのよん!」
「レオさん!ごめんなさい、アルバムを見つけたらとても懐かしくて。」
レ「アルバム?んまぁ!これはあなたがここに来てすぐの頃のよね?大変だったわぁ、あなた緊張してすぐドジするんだもの!」
「んもぉ、やめてくださいよ。恥ずかしい。」
レ「んふふ♡それにしても杏、あなたよく頑張ったわよねぇ。性格だってこんなに頼りになる子に変わって…感激して涙が出ちゃう。」
鼻をすすりながら私が渡したアルバムをめくって思い出に浸るレオさん。
この人には本当に迷惑かけちゃったな。
泣き虫でオドオドしっぱなしだった私をずっと励まして育ててくれたんだもの、本当に感謝しかない。
「レオさんのおかげですよ…それより、私を探していたって何かあったんですか?」
レ「あ、そうそう。坊ちゃんが呼んでたのよ!私ったら懐かしくてつい忘れちゃったわ。」
「イヴ君が?あ、早く行かないと」
レ「お〜ほっほっ!逞しくなってもまだ坊ちゃんが怖いのねぇん♡」
「だってイヴ君、すぐほっぺ引っ張るんですもん。力強いのに。」
両頬を抑えてムゥー!と抗議する私を笑い飛ばすレオさんに安心させられてしまう。
それにしても、イヴ君のご用って何かな?
お腹空いたとか?
レ「心して行きなさいよ〜杏。たぶんだけど、あなた給仕係クビになるでしょうから。」
「…!?!えっ!?私なにかやらかしたんですか!?」
レ「さぁ?ほらほら、早く坊ちゃんとこ行きなさいな!」
「ひぇぇ…」
クビって…七年も頑張ったのに…
本当に追い出されちゃったらあんまりだよ!
…でもイヴ君ならやりかねない…。
私どうなるの?
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