第27話文句?お願い?

―――

――

―…コンコン…コンコン…


なん…だろう…?これはノック音?


誰かな…ママ?


ーガチャ…


「…はぁ…このバカ女が」


バカ女って…この声イヴ君だ。


どうしたのかな?なにかご用かな?


「イヴ…君…」


「!。起きたのか?」


あ。そうだ、私パーティーを途中で抜けたんだっけ。ベッドに腰掛けてるのかな、ちょっと軋んだ。


来てくれてるなら起きないと。また…怒っちゃうから…


でも…どんな顔で会えば…


「ーっ…ぐす…」


「…はぁ。泣くほど辛いなら言えばいいだろうが。学習能力ねぇな。」


せっかくのお誕生日に申し訳なくて…我慢してた分、涙がいっぱいでてくる。


だけど、大きくてしなやかな手がグィィって荒々しく拭ってくれた。とても力が強いから絶対イヴ君なんだけど…め、珍しい…


「い、痛ぃ…」


「今度は起きたみてぇだな。なんでお前わざとぶつかられて何も言わねぇんだよ。」


「うぅ…だって…そんなのできないよ…それに今日はイヴ君の誕生日じゃない。」


「は?関係あるかそれ」


「あるよ…年に一度しかない誕生日だよ?喧嘩なんて…よくないよ。」


「…そもそもお前は誰かに口答えできる奴でもねぇけどな。」


そ、それなら言わなくてもよかったんじゃ…


でもこれでこそイヴ君って感じで変に安心しちゃう。だからか涙も少しずつ止まってきてる気がするよ。


「…ん。」


「?な、なに?」


「手土産。まさかねぇとか言うつもりか?」


「あっ!お、遅くなってごめんねっ。これ…エレナさんのお店で選んだの。お姉さんだって知らなくて…」


「って姉貴の店かよ。…まぁじゃぁセンスは悪くねぇか。」


「うんっ。とても可愛いのが選べたと思うんだ。」


エレナさんの事、すごく信用してるんだなぁ。


私があげた包みを見てクルクル回してる。…開けて欲しくてソワソワしてきちゃうな。


「…んだよ、落ち着きねぇな。」


「そ、その…開けてみて?」


「…?」


ーガサガサ


「どう…かな?」


「ピアスか?ほぉー。」


そう。私があげたのはピアス。


金髪のイヴ君にはとっても似合いそうな、天然石の白水晶を使った小さいデザインの物。


きっとかっこいいと思う。…いや、イヴ君は元がかっこいいから何つけても似合うだろうけど。


「イヴ君なら…なんでも似合うと思うけど、その…色白だし大きい物で着飾るより綺麗かな…って。」


「なかなかだな。能天気のクセにちゃんと考えたのもいい。」


「褒められてるのか罵られてるのか…」


でも喜んでくれてるみたい。


プレゼント渡せて本当によかった。渡せる勇気がなかったから言って貰えて私も嬉しかったし。


つけてはくれないのかな?


「つけないの?」


「いつつけようが勝手だろ。まぁそうだな、つけてやるとしたらお前が人に文句言い返せるようになったらだ。」


「永遠に来なさそう…」


も、もしかして本当は気に入らなかった?


文句って…さっき私にはムリって言ってたのに。


やっぱりイジワルだ。うーん…。


「…そうだ…」


「なんだよ」


「も、文句を言えば今つけてくれる?」


「言えるならな。」


「分かったっ。あの、イヴ君っ!!」


「んだよ」


「バカ女とかじゃなくてその…っえっと、名前で呼んで下さいっ!!」


「はぁ?」


毛虫を見る目!?すごい得体の知れない物を見るように眉間にシワを寄せてるよっ


で、でもちゃんと言ったよっ!!文句かは分からないけど…


「私…前にイヴ君に杏って呼んでもらえた時嬉しかった…だからっ。名前呼び…ダメ、かな?」


「…ーっ。ふん…」


「イヴ君…」


「それは文句じゃなくてお願いだろうが。」


「ゔっ…」


ダメ…だったかぁ。


でも自分の気持ちを伝えられただけでもよかったかな…。うん。


「しかもこの俺に文句つけようなんざ…っんとにバカだな、お前。」


「ごめんなさい…。あれ?」


「んだよ」


「ピアス…つけてくれるの?」


「…ふん。」


とほほって下向いちゃったけど、ゴソゴソしてるから気になって見てみれば…。


イヴ君、あげたピアスつけてくれてる。それがすごくかっこよくて…。


「わぁ…やっぱりとっても似合ってる。さすがイヴ君だね!」


「たりめぇだろバカが。俺はもう行く、明日の帰国の予定はレオにでも聞け。…じゃぁな。杏。」


「!?!?い、今っ」


「るせぇ。お前から言い出したんだ、キャンセルは受け付けねぇからな。」


チッ。て舌打ちしてるけどっ!!


名前、呼んでくれた…っ。うそ、信じられないっ。本当に?夢じゃない?


「そんな事なんてしないよ…ありがとう、イヴ君。それとお誕生日おめでとう。」


「…言うのが遅せぇ。」


それだけ残してイヴ君出て行っちゃった。


まさか本当に呼んでもらえると思わなかったな…。

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