第16話緊急事態
レオの声がうるさくて勉強中だったってのにペンが止まっちまった。
最近はあのバカ女のとこに遊びに行くのが楽しいのか、よく俺に休み申請してジャッポーネに旅行に行ってやがる。気が合うみてぇだしな。
俺としてはうるせぇオカマがいなくなって心落ち着くから願ったりだ。
「ったく。この俺を動かすんだからきっちりダイフクは用意させる。」
うるさかった理由もアホくせぇ。学校の行事の出し物でなんであれだけ騒げんだ。
しかも使用人用の制服だぁ?
はぁ。まぁレオの奴が管理してるしバカ女は借り物に慎重だから破いたりしねぇだろうけどな。
「それにSサイズじゃどの道使う人間も限られてる。余ってたし何着か捨てるかって話してたから別にいいけどよ。」
ジャッポーネの人間が小さすぎんだ。
さてと。目当ての服もとった事だ、さっさとぶん投げてくるか。
「?なんだ…?」
ガチャっと扉を開けて制服を管理している部屋から出れば…親父の部下が騒がしいな。
何かあったのか?血相変えて走り回りやがって。
部「il signorino ivu era qui !(イヴ様がいらっしゃいました!) 」
「È successo qualcosa?(何かあったのか?)」
部「Attacco nemico! L'alleanza ci ha tradito!(敵襲です!同盟に裏切られました!)」
「!?」
同盟に裏切られた?なんだってまた…。
俺達のファミリーは相当デカイ。そんなのを敵に回してまで得たい利益なんかあるのか?
そもそもどこのバカだ、そんな事しやがるのは。
部「Per favore, evacuate velocemente!(急いで避難して下さい!)」
「…チッ。」
もう中まで侵略してきてんだろ。部下は急いで走り去って行きやがった。
こうなっちまったら仕方ねぇ、俺や親父が捕まるわけにはいかねぇから護衛と避難が優先だ。
はぁ…タイミングの悪ぃ。俺の一番の護衛のレオはジャッポーネだぞ?
クソ。
「これだけ届けるか。」
俺の部屋までそう遠くはねぇからすぐに着く。制服押し付けてレオに帰って来いって伝えねぇと。
それに鏡も見つからねぇように隠しとくしかねぇだろ。
どうせ銃撃戦だ。すげぇ音にビックリしてあのバカ女様子見に来そうだしな。
こっちに来んなって注意しておいてやるか。
「着いたな。敵は…」
ドアを少し開けて俺の部屋の中を見る。
敵はいねぇ…な。いねぇが。
「なんでてめぇここにいる」
「あ、イヴ君!遅いからレオさんが心配してるよ?」
「レオが?っんとに間の悪い奴だよな、お前。」
「え?」
鏡の前に立って俺を待ってたのか?
よく敵に見つからなかったもんだ。この部屋にまだ来てなくてよかったぜ。
「ほらよ、制服」
「あ、ありがとう。ねぇ、なにかあった?凄く騒がしいような…。」
「…。お前が聞くことじゃねぇ。いいか、戻ったらレオに伝えろ。…いや、お前馬鹿だからこの手紙渡せ。」
「自然な流れで悪口言われた…」
「ふん。ほらよ」
手短にあった紙に殴り書きした”situazione di emergenza(緊急事態)”
イタリア語だからコイツには知られねぇはずだ。
後はこのバカを鏡の向こうに押しやったら俺は避難だな。
「ありがとう、レオさんに渡すね。」
「あぁ。おいアンズ」
「…。…え!?今名前!!」
「ふん。てめぇに言っとくぜ、何が聞こえても絶対にこっちに来るな。」
「ど、どういう事?」
「いいか。絶対に守れ。顔を覗かせるのもダメだ。どんなに激しい音がしても絶対に鏡を使うなよ。」
「イヴ君…?」
すげぇ不安だって顔してんな。そういやコイツ、だんだんと下を向かなくなったか?
イラつく頻度も減った気がする。
こんなお人好しが敵に遭遇したら数秒ももたねぇでお陀仏だな。
「行け。んでそれレオに見せろ。」
「う、うん…あのね!!そのっ」
「なんだ。時間がねぇんだ、さっさと言え」
「が…学園祭、来てね?」
「!」
「〜〜っ。」
「はぁ。」
「頑張るから…」
ポロポロポロポロ…こいつは本当によく泣くな…。
「…行けたら行く。」
「それ行かない人の常套句だよっ」
「日本人は好きだろ?こういう曖昧な返答。」
「時と場合っ」
「いいから行け。おら!」
ドン!!「わ、わ!!そんな強く押さないでぇぇっ!」
ートプン…。
行ったな。うし。
「俺もさっさと逃げるか。」
今ならまだ間に合うだろうしな。
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