第7話 ごめんなさい
夜遅く帰ってきた両親が私一人でいるのを見て、驚いた。
「晴は?」とパパが聞く。
私はママを見て、何か言おうとして言葉が出なくなった。
「灯花? ご飯、食べてないの?」
テーブルには晴さんがセッティングしてくれたままだった。
「…ごめんなさい」
二人は何も言わずに私の前に座ってくれた。
「晴とモンべべは喧嘩したの?」とパパは落ち着いた声で話してくれる。
「…喧嘩じゃない」
「そう? お腹空いてない? 温め直そうか?」と言って、ママはハンバークのお皿をそっとよけた。
「ごめんなさい」と私は繰り返した。
「べべは悪くないでしょ?」とパパが言うけど、首を横に振る。
「ごめんなさい」としか私は言えなかった。
「分かった。晴に電話して灯花が謝ってたって言うから」とパパは電話を鳴らした。
すぐに晴さんに繋がる。
「もしもし? 帰って来たんだけど…。うん。べべがひたすら謝ってる。…そう。うん。ご飯? 食べてない。…分かった。…はい」
パパが喋っている間に、私は涙が溢れた。
「べべが泣いてる」と言って、慌てて電話を切った。
「べべ…羊羹を何度も突き刺したんだって? それはダメだと思うけど、特に怒ってないって」
ママが温め直してくれたハンバーグを出してくれる。
「これ、晴さんが買って来てくれたんでしょ? せっかくだから食べなさい」
「ボナペティって何?」と言いながら、晴さんが残したメモを見せる。
パパが吹き出して「『召し上がれ』って言うフランス語よ」と教えてくれた。
「晴さん、…晴さん、なんで…めし…召し上がれ…なの?」と泣きながら聞いた。
「ねぇ。灯花。誰より愛してるあなたに美味しく食べて欲しいって書いたと思うのよ。心配して…。何があったの?」
私はママの顔を見て、さらに涙が止まらなくなった。そんな私をママが抱きしめてくれる。今日も微かに甘い匂いと花の匂いが少しした。ママの体は暖かくて、涙が少しスピードを緩めてくれる。
「先輩に告白されて…」と言うと、パパが「えー?」と大きな声で聞き返した。
「晴さんに相談したら…好きにしたらって」
ママが背中をゆっくり撫でてくれる。パパは何か言いたそうにしていたけれど、黙って私が落ち着くの待ってくれた。
インターフォンが鳴る。パパが出ると、晴さんが戻ってきたようだった。いつも晴さんはリビングに来るまでに必ず手をしっかり洗う。でも今はそれすらせずに、除菌ティシュでは拭き取っていたらしいけれど、リビングに入ってきた。
私はママに抱きしめられていたから首だけ動かして晴さんを見た。
「灯花、泣いた?」
私の涙でぐちゃぐちゃの顔を見ると、すぐに近寄って、膝を折って「ごめん」と晴さんが謝った。
「どうして晴さんが? …私がごめんなさい」と泣きながら、ママから抜けて、晴さんに抱きついた。
私は晴さんの匂いに包まれて、安心して思い切り泣いた。
その後ろでママが複雑な顔でため息ついていたのを私は知らなかった。
私の部屋にママが来てくれている。激しく泣いた後、ママと一緒にお風呂に入って、髪の毛を乾かしてもらった。パパは晴さんと一緒に晴さんの家に行ったようだ。
「灯花…。ゆっくりおやすみなさい」
「…ママ。ママは付き合ってみた方がいいと思う?」
お風呂の中でママには詳しく説明していた。ママは私の額をゆっくり撫でてくれる。
「灯花が好きだったら、いいんじゃないかな? でももし…好きになれないかもしれない。だから灯花が好きな人と付き合ってほしいの」
「ママ…」と言って、額を撫でている手を取って、布団に入れて「一緒に寝よう」と誘った。
今日はもうパパはきっと帰って来ない。だからママと一緒に寝ようと言った。
「うん」と言って、ママがそっと私の横に入ってきた。
「ママはパパがいないの…辛くない?」
「…少し。でも灯花がいてくれるから、平気。それにパパはずっと優しいから」
「ママはずっとパパが好き?」
「でもパパだって、好きって言ってくれる」とママは私に鼻に皺を寄せて言ってくれる。
だからママにひっついて、頭を擦り付けた。
「私も好きな人できるかな…」と言って目を閉じる。
ママの匂いは安心する。何だか今日は色々あったから疲れたな、と私はすぐに眠りについた。
結局、私はホルンの先輩の告白を断った。そしたら翌日、私の友達と付き合い始めていた。好きってなんだろうって思ったけど、気にしないことにした。ただそんなことで晴さんを嫌な思いをさせてしまったことは反省した。
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