第11話 強襲
そのパーティーは人死が多いようだった。本人達によればそれは彼等のせいでは無いという。いつもその最後の1人が不運にやって亡くなるという。
呪いつきの死神パーティー。そんなところに入る者達はなぜかこの10ヶ月で十数人もいる。
その理由。それは————
「あ?それって……本気?」
「そう、正直入ってくれるだけで良いの。私達だけでもそれなりに稼げるからね。その報酬の5分の1を君に渡そう。これでどうかな?」
破格の待遇であった。これは何十人も来るわけだ。そしてその者どもは全員死に絶えた。以上のことを鑑みればどうみても詐欺としか思えないような内容。少し考えれば疑いが出るはずだ。
「入りまーす」
そして彼は少しも考えなかった。
「ありがとう。それじゃこれに印を」ザッ
傷のある女は答えを聞くや否や、一枚の古い紙と羽ペンを何処からともなく取り出し机に置いた。紙にはなにやら書いている。日本語では無いが………
「(読める……読めるぞ?!)」
というふうによく分からないが読めた。肝心の内容は難しいものではなかった。パーティーのメンバーになる同意書だ。酷く簡潔で規約は2行のみだ。
1、この団に属する者はその間他の団に属せない
2、団員が罪を犯した場合のみ団長に解雇権が与えられる
「これだけか?」
「うんそれだけ。何をしてもいいよ。あと印はここね」
彼女はそうやって紙のど真ん中に指を刺す。そこには大きな空欄があった。
「眩しいくらいにホワイトだな。よし分かった」カッ
羽ペンを持って自らの名前を書き込む。今まで何回も書いた文字を。それをスラスラと書いていくうちに彼は………恐ろしくなった。
「……これは」
その字は全く知らない文字であった。けれど"カズヒラコウ"と書かれているのは分かった。意識したまま気付かないうちに知らない文字を書いた……
初めての感覚だった。カタッと不意にペンが手から滑り落ちる。
「どうかしたかな?」
「いや、、、なんでも無い。と、取り敢えず書いたが」
「大丈夫さ。それでもう契約は完了したよ。いやぁありがとねー。ほんと最近はみんな注意深くなっちゃって」
「まぁ全部俺らのせいなんだがな…んな訳ねぇだろぶっ潰すぞ?!」
怖い。
***
彼等と色々話し合った後のこと。どうやらメンバーの一人、【バ・アク・テトラ】という金髪の彼女が担当する依頼が来ているとのことだった。
流石に何もしないというのは気が気でないのでまたもや見学をさせてもらう事に。それに乗じてせっかくだから、と
【ルル・ラーム】もとい目つきが悪い彼、そして【デント・ダント】もとい紫髪の彼女、それにマフェも一緒に行くという。つまりパーティー全体という訳だ。
依頼についてはつまらないもののように見えた。なにせ「道の整備」というだけの内容だ。正に雑用。腕の見せ所なのかもしれない。
そう軽く思っていた現場までの道中。草原を歩いている中でダントとテトラはポットの好みについてずっと喋っていた。
「ポットはマケットのが絶対良いの!見てこの彫刻!もうキレイでしょ?」
と彼女は誇らしげに両手を見せつけてきた。その手は透明な結晶で出来た、剥き出しの骨のような見た目だった。そしてびっしりと細かな模様が描かれていて芸術を感じる。
「いや……その彫刻には何のタクティカルアドバンテージもないよ。全くいつからそんな物にハマったのか。やっぱり実利を重んじなきゃね。ていう事でやっぱり、グリミラルのアクトニウム製をだね——」
とかなんとか彼女らが話していると、コウの隣を歩くラームが不意に口を開く。
「コウ、お前はどんなポットに興味があるんだ?」
「え?」
「いやなに、今は金を持ってないだろがいずれお前も買うだろ?ありゃ前もって決めておいたほうがいい。少し高いんでな、趣味でも実用でも後悔しない方を選ぶべきだとは思う。いまの今までで後悔したやつをゴマンとみたさ。ま、それもこれもお前がそれまでに生きてたらの話だがな!ハハ!」
と彼は快活に笑う。
「おい不吉な事言うなよ...不吉だろ。まぁポットのことは頭に入れておく」
とは言うもののポットを自分がつけるイメージが全く湧かない。義手を付けるような気分なのだろうか。それはもう便利なのだろうが……
———ヒュッ
突如風を切り裂く音が彼の耳を貫いた。一瞬思考が停止する。しかし、宙に浮かぶ数滴の血液に気付くと、痛みが急激に到来した。
「っいっ!」
彼が苦痛の声を漏らし、片耳を抑えると同時に全員の目つきが変わる。彼等は各々武器を取り出して辺りを素早く目で確認した。
その直後、木々の奥からキラリと光る何かがコウに向かって一直線に、物凄いスピードで飛んでくる!それが一個ではなく何十個個も!
「やらせんよ!」バッ
ラームは即座にコウを自らの後ろに引きずり、飛翔物体へと正対した。
強調するがソレらは速かった。空気を裂く音がハッキリと聞こえる程だったのだ。だが、それ以上にラームは早かった。
彼は腰を低くし構えると、飛んできたもの全てを片っ端から掴んでいく。ギロギロと両目を動かし関節の限界を超えた動きをする。まったく人離れした姿であった。
その傍らマフェが細長い剣の切先を物体が飛んできた場所に向ける。すると、次の瞬間にはそこにあった木々や草が轟音を上げて真っ平に押し潰された。
「行くよ!」
ダントの掛け声で全員が走り始める。コウもラームに引っ張られる形でその場から離れた。
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