第6話
ヒョウガはリナに負けた後、人通りの少ない路を一人で歩いていた。
(負けた……)
アイツ――リナは雑魚と群れていてもそれでも強かった……。オレだって強くなる努力は怠ってねェ……なのに負けた……。
思えば出会った頃からアイツは強かったな……――。
――初めて会った時はお互いルーキーだった。ルーキー同士だったからかパーティを組んだ時にはよく話していた。模擬戦も何度かやったがその頃からあまり勝てなかったな。
パーティ組むようになってしばらくしたある日、ふと、気になって何で冒険者になったのか聞いてみたら、
『あぁ理由ねぇ……まぁあんたならいいか……それはね――復讐よ。あたしはね両親を殺した奴に復讐するために冒険者になったのよ』
冒険者になる理由は様々だろう、中には復讐が目的の奴だっているはずだ。だけど、あんな笑顔で目的が復讐だと言い切るアイツに言葉が出ずに、ただ謝る事しか出来なかった。
それ以降アイツは、パーティを抜けて一人で活動していたらしい。ギルドですれ違う事があっても何て声を掛けていいかわからず今に至る――。
――それなのにアイツは雑魚供とパーティを組んでいた……、それがどうしようもなくイラついて……。
「ハァ……」
「こんにちは、お兄さん。何か悩み事でもあるんですか?」
後ろから声を掛けられ振り返ると、ソイツはいつの間にかそこにいた。
ソイツは仮面を着けて全身黒のコートを羽織っていた。
(いつからそこにいた!?気配も何も無かったぞ……!)
「おやおや?どうしました?あぁ、いきなり声を掛けられてビックリされてます?」
「何だテメェは?」
「おお!名乗るのがまだでしたね……」
大仰な仕草のお辞儀をして、名乗り上げた。
「私の名はシャッテン。商人をしております」
商人だァ?全身から怪しさを臭わせてるこいつがかァ?
「オレはヒョウガだ。で、何の用だ?オレは今気が立ってるんだ」
「では手短に。貴方今……力が欲しくないですか?」
「はァ?」
何を言ってるんだコイツは?
「貴方には勝ちたい人がいる。その人に認めてもらいたい、振り向いてもらいたい、自分に頼ってもらいたい!そう思ってはいませんか?」
「本当に何を……言ってるんだ……」
なぜだ、なぜここでアイツの事が頭に浮かぶ!?
「自分の心に素直になってみてください。そうすれば自ずと答えが見えてくるはずです!そのための力を私は提供出来ますよ?」
「自分の……心に……」
どうしてアイツは今までひとりだったのに急に雑魚供とつるんだんだ。何でオレじゃないんだ……。
あの雑魚供が――妬ましい。
だからオレは……アイツに勝って……、
そして……。
「私の手をとれば力を渡しましょう。さあ!貴方の欲望のままに!」
手を差し伸べてくる商人。コイツの目を見ていると思考に靄が掛かったみたいに、オレはもうアイツの事しか考えられなくなっていた。
勝ちたい……認められたい……オレの物にしたい!!
そうしてヤツの手をとった。
「契約成立ですね……。さぁ受けとるといい貴方の目的を果たすための力を!」
「うぁああああああああああああああああっ!!」
流れ込んでくる力、溢れる感情、そこから意識は黒い何かに塗り潰されていく。
意識がぼんやりする中、何かが語りかけてくる。
「忘れてま……が、契……対価を言ってません……たね。指定する場所に力……る人……連れて……だ……す」
そこで意識は完全に途絶えた……。
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