第41話
啓一達は二人の形跡が残っているかの確認を取るためにも、ある人物を連れて隣市に来ていた。
「テメェ暴れんな!テメェが空間属性の魔法使えるから連れてきてんだぞ!ちゃっちゃと仕事しやがれ!」
「俺頼まれる側だよね!?恵ちゃんも何とか言って!」
「船橋、さっさとやってくれる?」
「おかしいな、気を遣われてる口調なのに遣われてないかな感」
連れてこられたのは空間魔法を得意とする船橋だった。
ここ1週間は身体の痛みが取れず休んでいたが、遂に痛みが抜けて登校した矢先、啓一に首根っこ掴まれて連れてこられたのだ。
「それよりもそこのブツブツなんか唱えてる役立たずインキャはなんなんだよ!」
「あー、まぁ話ややこしくなるから、ポンコツ無能侍って呼んでくれ」
「お前、結構酷いこと言うね」
しかし啓一はただ感想を言っただけであり、それ以上の皮肉は言ってはいなかった。
「それよりここで空間転移が行われたんだ。どこに飛んだかわかるか?」
「んー」
船橋は腕を組んで考え込む動作をするが、それ以上の観察をする気配はなかった。
「単刀直入に言うな?ここで空間転移が起きた形跡はあらへん」
「テメェ適当なこと抜かしてたらぶっ殺すぞ」
腕をポキポキ鳴らす啓一だったが、船橋は意見を変えるつもりもなく首を振る。
「俺だって空間魔法使いの端くれなんだ。まず間違いなく空間魔法は使われてない」
「本当だろうな?それを信じるのはいいとして、だとすればあの魔法は空間魔法ではなく幻影の系統の魔法ってことになるな」
「じゃあ幻影魔法使いを探せばいいのかな?」
「いや、俺の見立てではあれは魔導具だ。あの規模はあまりにも大きい」
魔力量は個人差があるが、魔力の出力量まで個人差があることを知ってる人間は多くはなかった。
それ故に啓一はその魔法が魔導具かそうじゃないかをある程度見分けられる。
「だがもし仮にあの規模の魔法使いだとすると、相手はかなり高度な魔法使いで、実力も高須の足元くらいには及ぶと思うぜ」
「因みに恵ちゃんと蘇我はどっちのが強いんだ?」
啓一と恵は互いに指を差し合った。
これは啓一はダインスレイヴの強化を頭に入れずに話しているためであり、生身の実力は恵、ダインスレイヴありきなら啓一に軍牌が上がる。
「どっちだよ」
「俺はダインスレイヴなきゃテメェと互角くれぇだろ」
「え!?啓一くんってダインスレイヴ無しでも闘えるの?」
「相手の動きを模倣するのは魔法が使えない俺が縋るように身につけた技だしな。魔導具とか使えば船橋くらいなら余裕だな」
「動きのコピーもダインスレイヴの能力だと思ったよ」
ダインスレイヴを持つ事で、演算能力が上がり相手の能力を看破することもできる。
その為船橋の実力は正確に割り出せていて、ダインスレイヴ無しでも勝利をもぎ取れると半ば確信していた。
しかし逆に言えば、その演算力を待ってしても波子の後ろに現れた転送ゲートについてはわからなかった。
「話を戻すが飯田は、転移を使われずに易々と奪われた事になる」
「お前だっせぇ」
啓一の鍛えられたゲンコツが頭に降り注ぎ、目を回し込んで船橋は倒れ込んだ。
「飯田はまだ近くにいるって考えていいだろうな」
「何でそう思うの?」
「飯田の目的がこのポンコツだったぽいってのがあるな」
そうして指さされた湊だったが、昨日からこの調子でため息が出そうになり、グッと堪えて話を続ける。
「このポンコツに殺されるのが目的とは考えづらい。恐らくこいつをおびき寄せて、犯人が狩るってのが本来の目的だ」
「こいつ一体何したの?」
「それはわかんねぇが、こうなった原因に関係してる。コイツにトラウマを植え付けるレベルってのだけは確かだな」
「ポンコツくん啓一くんと互角だった。それってかなりまずいんじゃ」
恵の言ってることはその通りであり、このまま手をこまねくのは自殺行為だった。
その為、啓一はある程度作戦を考えていた。
「お前らのスマホに位置情報を送った。今からそこをしらみつぶしに探すぞ」
恵と船橋はそれを見て場所に思わずギョッとする。
その場所は全てラブホテルと思われる名前を示していたからだった。
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