湊と啓一の殺し合いは喧嘩に発展し、最終的には啓一の勝利で場を制した。

　そして啓一は勝者の恩恵として彼に詰め寄って居たのだがーーー

「断る！いくらワイが行き過ぎた正義を掲げてるとはいえーーーゴボッ！？」

　啓一は思い切り拳を振るった。

　流石に吹き飛ばされるとは思ってはいなかったらしく、殴られた方の頬を抑え込んだ。

「ごちゃごちゃうるせぇ！負けた方は勝った方の言うこと聞くんだよ！」

「横暴や！」

「テメェみたいなタイプは、冤罪で人を殺しても必要な犠牲と割り切るんだろ」

「そうや！仁義ちゅーもんがある！例えテメェらに何の罪が無いとしても、疑われたってことが問題ある！だから事情は話せへん！」

「そして事情を話さないまま過ごして孤立して行くんだ。なぁ孤立して残るのはなんだ？」

「元から孤立してるワイには関係あらへんな！ワイは物心ついたときからもう異世界におったから！」

　それには幼い頃に転移した啓一や恵ですら驚きを隠せず、数年しか異世界に転移していなかった波子は信じられない様な顔で湊をみた。

　しかしすぐに首を振り、啓一は湊の胸ぐらを掴みあげる。

「言ってみろよ。俺も高須も幼少期に異世界転移に巻き込まれた身だ。しがらみがあったんだろ？」

「自分らも！？」

　二人から視線を外し波子に視線を向けるが、波子は中学の時に転移させられたのでそこまで長くはなかった。

「あっしは違うわよ！？」

「なんやねん！シンパシー感じてわるぅおもーたのに！」

「いやお前は悪いと思えよ」

「すまん・・・」

　塩らしい態度はさっきまでの強い口調からは想像も出来ないものだった。

　そして実情を話せるような精神状態へと戻っていた。

「ワイは感知の祝福を持ってるんや。それでコイツが使う魔法が召喚魔法ではなく創造魔法だって事に気づいた。だからこの市で各地で起きた動物の死体をみて、すぐに創造魔法だって気づいた訳や」

「は？創造魔法！？」

「創造魔法？なにそれ？」

「啓一は知っとるんやな」

「あぁ。創造魔法って言うのはなーーー」

　啓一が驚くのも無理はなかった。

　創造魔法は召喚魔法とは違い、世界でも一人だけが授かるとされる魔法。

　世界に生命体、物体、ありとあらゆるものを生成できる魔法だからだ。

　それ故に負担もまた大きかったりもする。

「飯田、お前一体何を代償にそれを使ってる？」

「・・・」

「ワイの感知は相手の特性を全て看破する。使っているのは他者の命や」

「え、彼はそんなこと一言も言ってなかっーーーあ」

　思わず口を閉じるも時既に遅かった。

　それが肯定を意味しているからだ。

「千葉の言ってることはわかったが、今度は飯田に聞く。どうして召喚魔法って嘘をついてる？学園側はともかくお前は勘違いじゃ通らねぇぞ」

「あっし・・・流石にやっかみが起きそうじゃない？だから黙ってたのよ」

　その笑顔はどことなく無理のしてる笑顔だ。

　それ故に啓一は追求を辞めない。