第30話
ゲームセンターを後にして一行は波子の召喚獣が殺されたであろう現場に向かう。
「次々に召喚獣が殺されてる!召喚獣達は逃走優先に指示したからネズミ系以外の魔物は問題ないと思うけど、弱い召喚獣は多分全滅かな」
その言葉でなんとなく現場の状況は察せたが、いざ見てみてるとやはり口を押さえたくなる光景だ。
そこは現代の日本とは思えない凄惨なものが広がっていた。
「すごい。これを作った犯人はサイコパスか、よっぽど動物が嫌いかのどっちかだね」
「だろうな。ひでぇ事しやがる」
そこには犬、猫、ネズミ、たぬきと言った、都会でも探したら見つかりそうな動物や、猿や豚、クマと言った動物の頭を金属鉄パイプの先っぽに首から差し込み、まるで串刺しで晒し首をしてるような状態だった。
もしこれを正気でやっているなら、犯人はサイコパスで間違いはなく、そうじゃなかったとしても何らかの精神疾患になっている恐れがある。
「あっしは警察に連絡するから、二人はくるであろう野次馬の対処お願い」
「オッケーだよ」
恵は野次馬が来ないように、ここら一体を誤魔化す魔法を発動する。
無意識に足を遠避ける結界だ。
「それにしてもこれをやった奴の意図がわかんねぇな」
「こんな最低な行為に意図があるの?」
「犯人が別の目的があったとして、少なくとも雲隠れの目眩しにはなんだろ」
「目立ちすぎてるからそれは無理あると思うけど」
「そうなんだよなぁ」
少なくとも犬か猫、人が気に留める生き物の頭ひとつでいい。
こんなにすれば、警官は躍起になって犯人の調査網が濃くなる。
そこまで考えれないバカならいいが、そうではないなら意図した事がある可能性があり、それは後に取り返しがつかなくなる可能性すらあった。
「触った感じ切り口が綺麗なのもそうだが、全部違う動物ってのも気になるところだ」
「意図的に並べられてるよね。切り口は鋭利な刃物かな?」
「明らかに綺麗過ぎんだ。まるで水のカッターで斬られた様な」
生き物の首を切断するのは、たとえ死体でも難易度は高い。
医療系の刃物を使わないとすれば、重たい物や大型の刃物で切断するしかない。
しかし切り口が綺麗な為、無理矢理切断したとは考えにくかった。
「帰還者の仕業って考えるのは早計か?」
「これをする意味がわからないよ」
「それは別の犯罪を目立たせない為に行ったんだろうな」
「これは流石に目立ちすぎじゃないかな?」
確かに恵の言う通り目立ち過ぎだと言うのは啓一も考えた。
しかしこれだけ猟奇的な現場でも、日本では逮捕はされない。
日本では動物は生き物ではなく物なのだ。
「警察呼んだけど今、街のあちこちで動物の死骸の頭を鉄パイプに刺して晒されてる場所があるらしいよ」
「そうなると大きな事件がどこかで起きてるかもな」
「昨日の事件と関連してるかな?」
「関連してねぇと思うな」
本来の目的である犯人探しとは別件だと啓一は考えていた。
「昨日の犯人は顔を変えられる泥人形が作れるんだ。別にこんな大掛かりなことをする必要はないだろ」
「事件の内容が金銭面だったらどうなのよ」
金銭面、例えば麻薬の取引であればこの時間の誘導も意味のあるものではあるかもしれない。
しかしそれもないと考えていた。
「それは神域学園に襲撃した意味がねぇだろ」
「確かに下手な警察より面倒だもんね」
「でもそんな各地にこの事件現場を作れるなんて」
「まぁそれは勇者が関わってる可能性が高いな」
どう考えても人力では無理なのだ。
こんな凄惨な現場を一日誰も気づかないなんてのはありえないし、ありえるとすれば恵の様に結界で隠す事。
動物の血液が乾いていない為、今日行われたのはわかるが、大人数でやるにしてもそれなりの力のある大人が複数人いなければならない。
「相手は分身するような魔法か、時間を止めるような魔法を使えると仮定して調べないといけねぇな」
「それって仮に見つかっても戦闘になったらキツいよ!?」
時を止める能力、分身の能力、隠蔽する能力、どれにしても集団を相手しないといけない魔法使いに違いはない。
「とりあえず周辺を探してみるか。まだ犯人がいる可能性はあるんだ」
「じゃあ私は聞き込みしてくるよー」
「あっしは取り敢えず散らばってる魔物達を呼び戻して情報を聞くね」
召喚獣は波子に状況を報告する以外の伝達方法を持たない。
故に呼び戻す必要があった。
「離れて行動するのは危険だ。俺も飯田に着いていくわ」
「あっしは1人でも大丈夫よ?」
「そうも行かねーよ」
啓一は犯人の中に波子も入れていたのだ。
集団で召喚獣に動物の頭を設置させれば、簡単にこんな現場は作れるのだから。
それも恵は察したので、二人がここに残ることを承諾して聞き込みに向かった。
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