第8話
放課後、啓一は恵と共にいつも通り帰っていた。
一つ違うのは恵以外にもう一人いることだろう。
「悪いねぇお二人さん。デートの邪魔しちゃって」
「あぁ邪魔だ。帰れ船橋」
船橋は二人の下校に無理言ってついてきた。
啓一と恵は何度も撒こうとしたが、めげることなくついてきた。
「ひっでぇ!恵ちゃんからも言ってくれよ」
「気安く名前呼ばないでほしいな?」
「こっちまで!?」
二人に責められ、流石に涙目になっているがそれでも着いてくるのをやめない。
まるでストーカーのようだった。
「んで、なんなんだよ着いてきて」
「いや、お前らに頼みがあって!」
「頼み?なんだよ頼みって」
「不正をしたBSFが襲われた事件現場ついてきてくれ!」
「は?」
船橋は不正をしたBSFが襲われた事件現場と言った。
つまり襲われた理由を知っている、わかっているということだ。
啓一は船橋の胸ぐらを掴み上げ、顔を近づけ睨みつける。
「お前、アホだろ?ニュースでも報道されてないようなこと言うなんて、お前が犯人だとしても、情報を知っていたとしてもアホだ」
「あ、そうだった!教師が朝に会議してるのを聞いたんだよ。ちょっと早く登校しちゃってさ」
啓一は船橋の瞳を見つめ続ける。
船橋は時より目を逸らすが、一応は目を合わせようとしている。
「挙動不審過ぎるな」
「本当だって!ただその・・・」
「あ、船橋くんって実はコミュ障なんだね」
「は?」
恵のことばに船橋の目に再度視線を向ける啓一。
頑張って視線を合わせていたが数秒経つと目を逸らした。
「おい、マジかよ。船橋お前陽キャの塊みてぇな奴だろ」
「いや、俺は、その・・・そうだよ!俺はコミュ障だよ陰キャだよ!人と視線を合わせるのが苦手だし、面白い会話もできねーよ!」
「何もそこまで言ってねぇだろ」
「いてっ」
啓一は思わず拍子抜けして手を離してしまった。
微塵も想像していなかったから仕方のないことだろう。
「はぁ、拍子抜けだわ。それにしてもよくわかったな高須」
「人の顔色を読むのは得意だからね!」
「へぇ、やるじゃねぇか。そんで船橋!事件現場に行く、だったか?なんで行きてぇんだよ。コミュ障が野次馬か?そんなわけねぇよな」
「いや、実は被害者に俺の兄貴の友達が居てさ。事件の状況が知りたかったんだ」
「不正したBSFが襲われたってところからまず説明してくれよ。状況がわからねぇだろ」
啓一がそういうと、船橋は朝に聞いた教師達の会議について話し始めた。
朝、BSFで不正をし懲戒免職を受ける人間が襲われ、啓一の担任の中山夏宗も不正に関与していた可能性があるということ。
「ってわけなんだよ」
「中山がBSFの不正に関与してる可能性か」
「あぁ!よく言うだろ?犯人は現場に戻ってくるって」
「BSFを襲ったのが中山だと思ってんのか?」
「あぁ!だから犯人に事情を聞きたいんだ。何故、兄貴の友達を襲ったのかを」
「いいぜ。犯人が現場に戻るってのは同意だ。着いてってやるよ。高須も来るよな?」
「・・・」
恵は何かを考えこんでいた。
様子がおかしいので、啓一は声を肩を叩いた。
「高須?」
「あ、ごめん。事件現場行くんだよね?もちろん私も着いてくよ」
「あぁ。大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫」
「そうか?あんま無理すんなよ?船橋、さっさと案内しやがれ」
「俺への扱いの落差がひでぇ!」
啓一は恵の心配をしたあとに、ガシガシと船橋を蹴る。
扱いの違いに涙目になりながらも、事件現場に向けて歩み始める。
「それにしても襲撃犯はどうしてBSFの人間を殺せなかったのかな?」
「情が移ったんじゃない?中山のパーティメンバーもいたらしいし」
「警察を襲う犯人がそんな詰めの甘いことするかよアホが」
「ひっでぇ。でも確かに口封じするなら殺したほうがいいのに、なんで殺さなかったんだろうな」
「まぁそれは犯人に聞けばわかるだろ」
学園街をしばらく歩いていくと、テープを張っている場所に辿り着いた。
野次馬を押し退けると、警官が数名とBSFの警官が居たと思われる場所を検分している検察官がいた。
「こら!見世物じゃないぞ!(カシャッ!)写真を撮るな!」
警官が野次馬のスマホ撮影を手を大きく振りながら注意をしていた。
「ひっでぇな。学園街って言っても民度は悪ぃな」
「そりゃ愚かな人はどこにでもいるよ」
「そんなことより中山を探そうぜ」
船橋に言われて、啓一と恵はあたりを見回す。
しかし中山らしき姿は見当たらない。
「流石にいねぇな。そもそもこんな夕方じゃなくて深夜に来るんじゃねぇ?」
「いや、そうしたら目立つ。絶対このタイミングで来るはずなんだ!」
「なんか根拠があんのか?」
「俺の勘がそう言ってる!」
「勘かよ!当てに・・・お前の祝福か?」
「流石優等生!これは俺がもらった祝福は極限直感。詳しい説明は難しいが、俺の志向の正確さを感覚で感じ取れるってやつだ」
この能力の強力な部分は、船橋相手に
隠し事はできないし、奇襲や見せ球も通じない。
「いいなぁ。羨ましいなぁ。私もそういう祝福がほしかった」
「高須さんが頼むならなんでも感覚で感じ取るぜ!」
サムズアップが無性にへし折りたくなる啓一。
しかしすぐに表情を引き締めた。
野次馬の中に中山と思われる人影が見えたのだ。
「おい船橋。あれ中山じゃねぇか?」
「は?マジだ・・・こっそり後をつけよう」
中山と思われる人物の後をつけていく。
どんどん学園街の人通りが少ないところへと進んでいく。
「さすがにこのルートはおかしい。着けてんのバレたか?」
「そんなことないんじゃない?振り返る様子ないし」
「待ってくれ。俺の勘であいつは俺達がつけてるか判断す・・・」
その瞬間、船橋の勘は告げていた。
中山夏宗が何かか逃げていると。
その対象が誰なのかはすぐにわかった。
後ろから高速で船橋の横を駆け抜けていったからだ。
「嘘だろ!?おい、蘇我!」
船橋は追いつけないと勘が告げていたため、啓一を名前を呼ぶことしかできなかった。。
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