第14話

そんなマリーが聖クラレント魔法学園に入ろうと思ったきっかけがあった。



それは彼女が13歳の時、いつもの様に町中の人から頼まれ事をされ、そのお礼品としてたくさんの菓子や果物を抱えて歩いていた帰り道。




よく友人との待ち合わせの目印に使う大きな桜の木を通り過ぎようとした時、木の上から薄水色の何か巨大な物体が落下してきた。




「きゃっ!?」



驚いたマリーが思わず飛び上がった拍子に抱えていた大きな袋からリンゴが数個程地面に転がってしまう。




「ああ…やっちゃった…」



荷物を抱えたままゆっくりとしゃがみこみ、マリーが落としてしまったリンゴを拾おうとした瞬間、そのリンゴに突然薄水色をした巨大な物体が飛び付いてきたかと思うと、




マリーの手からリンゴをひったくり、大きな体をぶにゅぶにゅと蠢かせながらシャクシャクとリンゴを喰らい始めた。




「!?え…え!?ま、魔獣!?」



突然現れた謎の物体に、マリーは慌てて魔法を展開したが、目の前の物体には全く効果がない。




(どうしよう…こんな魔獣見たことも聞いたこともない…もしかして魔法耐性がある魔獣なのかしら?どうやって戦えば…)




『俺には魔法なんて効かねーよ』



マリーが途方に暮れていると、リンゴを食べ終わった魔獣(?)がぶにゅりとコチラを振り返った。




魔獣(?)の発する声は何故だかくぐもっていてヘンテコな声をしていて、聞き取りずらく、マリーは眉を顰めた。



「魔獣が喋った……?」



『いや、魔獣じゃねーし。こんな可愛い魔獣いたら世界がひっくり返るわ』




「か、かわいい…?」




『可愛いだろうよ?ほれ!』



くぐもった高い声でマリーに抗議しながら、魔獣(?)は振り返った体制から改めてマリーの正面に向き直ってその短い藍色の手を広げてみせた。



正面から見た魔獣(?)は一頭身のネコのぬいぐるみだった。



全長50cmはある大きな体はたっぷりと綿が詰まっているのか、かなりボリューミィーでその体を支える短い藍色の4本の足のアンバランス感が確かに愛おしい。



刺繍された漆黒の瞳は、どこか光を宿しているようにも見え、喋る度にふむふむと黒い艶のある鼻(と思われるボタン)が上下する。




「ぬいぐるみ…?」



『違うけどそうだよ』



「いやあああああああ!!」



その日、マリーは喋る巨大なぬいぐるみと出会い、驚きのあまり失神した。

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