第13話

♡♡♡



マリー・マリアンヌは驚愕した。



彼女はたった今、生まれて初めて自分が関わろうと声を掛けた相手に素通りされてしまった。



しかもその相手は彼女が追い求めていた理想が人間の姿をした様な人物で、彼女の意中の相手だった。



理由は"ちょっと急いでいるから"。



全くもって前代未聞の事態である。



マリーは一般家庭の生まれでありながら光魔法を操ることができた。



名家ホワイト家以外の人間で光魔法が使えるのは伝説の聖女の生まれ変わりを意味する。



そう、マリー・マリアンヌ、この少女こそがLOVE MAGIC OF LIFEの主人公でありヒロインなのだ。



類まれなる才能と、そのふんわりとした癖のある金髪にアメジストの様な輝く大きな瞳。



彼女に見つめられた人物は彼女の放つ癒しと赦しの独特なオーラに魅了され、虜になる。



もちろん彼女をやっかみ、嫌がらせを受けることもあったが、実際に彼女と向かい合った瞬間、これまでの敵が味方へとひっくり返る。



そんな彼女がこの聖クラレント学園に入学したのは今年の4月のことだった。



大多数の生徒はただほんの少し魔力があるというだけで突出した者はいなかった。



それ故に彼女ばかりが注目されてしまうのは当然だったが、そんな賞賛など彼女は欲しくなかった。



彼女がこの学園に入学した理由…それはただ一つ。



「自分に相応しい騎士を見つけること」



聖女の生まれ変わりである彼女は、周りから抜きん出たその才能故に、常に周囲を救い、支えてきた。



それは彼女にとっては日常で、特別なことではない。



しかし、それと同時に彼女が優れていることによっての弊害がただ一つだけあった。



それは、彼女の苦悩を誰も理解し癒すことが出来ないということ。



"聖女の生まれ変わり"として慕われてきた反面、彼女は彼女自身―"マリー・マリアンヌ"として慕われたことがなかった。



実際のところ本当にそうだったかは誰にも分からないが、少なくとも彼女自身はそう感じていた。



他人を癒す反面、彼女は漠然とした孤独を感じていた。



聖女ではなく、"マリー・マリアンヌ"として自分を理解して欲しい。



そう初めて両親に零したのは、彼女が10歳の時だった。



しかし、次に両親の口から飛び出してきた言葉は、



"聖女であるお前が誰か一人を特別に愛し、慕うことは許されない"



"神が皆に対して平等な様に、お前も皆に対して平等でなくてはならない"



だった。



この時、彼女は生まれて初めて絶望を知った。



自分がどんなに他者を赦しても、他者は自分を赦してくれないのだ。



しかし聖女の特性なのか、彼女はそれでも両親に負の感情を抱くことが出来なかった。



いっそ憎めてしまえば、このどうしようもない生まれも両親のせいにできるのだが、それでも彼女の心は変に冷静で、魂のルーツまで両親がコントロールできる訳がないと諦めることが出来てしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る