第12話

「ライ、こっち見て!!」



「いった」



強引に腕を掴まれ、眉を顰める私の顔をメロウは両手でガシッと捕らえ、私の顔を隅々観察する。



「なになに」



「なにじゃないだろ!黒魔法士に近付くなんてどうかしてる!魔力を抜き取られでもしたらどうするんだ!」



「黒魔法士?」



メロウの言葉に全くピンとこない私にメロウがその美しい唇からため息を漏らす。



「ライ…、優秀な君なら黒魔法士がどんな存在だかくらいは理解してると思ってたんだけど…?」



「!?」



(そうだ!私は学園一の優等生だった…!!)



墓穴を掘ってしまった私はショックのあまり目眩がした。



そして自分の失態をどうにかして取り繕うと弁解を試みるが、焦りで唇が震え、同じ音を意味がわからないくらい繰り返してしまう。



「なななな、なぁ〜に言ってんだか、分かってるよ〜久しぶりに見たからド忘れしちゃってただけで。今思い出したから!うん、完全に思い出した!」



「ほんとに?だってライ、この間の魔法書士のテストも全く出来てなかったよね…」



(クソう!!なんでそんなことまで把握してんだよ!試験結果誰にも話してないのに!!( ´ ᾥ` ))




「いや…あれは違くて…!今のは本当にド忘れしてて…」




「最近集中力もないみたいだし…」




(うっるせえええええええ!!元々集中力無いんだよ!!ええ、だから前世も成績は悪かったですよ!!高校受験もなんとなあ〜く受けてなんとなあ〜く合格したトコに行きましたとも!自分でも分かってるから親みたいなこと言うな!!)



内心で耳を塞ぎながら叫ぶ私を、メロウは心配そうに私を見つめ続ける。




「ライ…やっぱりコイル先輩の薬のせいなんだよね?」




「え…?」



思ってもみなかった話の展開に、私は思わず目を見開いた。



(え、これ薬のせいに出来るパターン?ラッキー!)



「体が急に変化しちゃって、君は態度には出さないけど、かなりのストレスだよね。だから試験勉強にも身が入らなかったんでしょう?気が付かなくてごめんね。今日からまた一緒に自習頑張ろう?」




「え…でも…」




(一緒に自習したってぶっちゃけメロウに質問しずらいんだよなあ…そもそもこの世界の基礎知識すらないからテキストの言葉の意味がいちいち理解できないし…質問したところで不思議がられるに決まってる…これ以上推しの評価を下げる訳にはいかない…!!)




脳内会議が終わり、私はメロウに視線を戻した。




「いや、やっぱり一人で集中したいから、今回の結果の反省を含めてさ…。心配してくれてありがとう、じゃあ!そういうことで!」



「あ、ちょっとライ!」



メロウの呼び止める声を無視し、私は裏庭から走って抜け出した。




(こうやって距離をおけば乙女ゲーみたいに好感度が下がって婚約破棄になるかもしれないしね)




そうして一旦はメロウから逃れた私は久しぶりに一人で寮の自室に戻りろうとそのまま走り続けていた。



そしてその道中に一人の女子生徒とすれ違い、その直後に女子生徒に呼び止められたが、私は少しだけ振り返って「ごめん!いま急いでるから!」と笑顔で誤魔化し、走り続けた。



女子生徒と話していてはメロウを撒くことはできない。



その時の私はひたすらに一人になることしか考えていなかった為、その女子生徒が美しい白銀のレースであしらわれたチョーカーを首に付けていることに気が付くことが出来なかった。

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