第8話

「コイル先輩、ライに変なことを吹き込むのはやめてください」




突然現れたメロウに私の体は思わずビクリと飛び上がった。




一方、コイルはというとメロウの出現にパッと私から離れ、相変わらずのおちゃらけた笑顔を浮かべる。




「変なこと?僕は変な事なんてなんにもしてないよ?」




「ライが今あなたのせいでどんな目で見られてるか分かってるんですか?」




「え〜?全部僕のせいっていうのは違うと思うけど〜?」




(あ、このシーン見たことある)



私は2人のやり取りを眺めながら微かに蘇ってきた記憶と重ね合わせた。




魔法薬の副作用で女体化してしまったライは、3日後の今日まで寮に引きこもり、魔法薬が体から抜けるのを待ったが、一向に体が元に戻らないことにしびれを切らしてコイルのいるこの研究室を訪ねたのだ。




元々コイルに強いコンプレックスを感じていたライはコイルのおちゃらけた態度に激怒し、魔力を使ってコイルを攻撃しようとした所をメロウが止めに来るのだ。




(お〜原作と同じ会話ということは、私がライと同じ行動を取れば原作通りに軌道修正されるのかな?)



原作通りの展開になれば、ライの体は男性へと戻り、魔力も回復する。



なによりも、メロウと私(推し)の婚約を超消しに出来るかもしれないのだ。



「新しい魔法薬を試してみたいって名乗り出てくれたのはライちゃん本人だよ?確かに僕もここまでの自体を想定できなかったのは落ち度だと思ってるけど、噂のことまで僕のせいにされるのは違うんじゃない?」




ヘラヘラとおちゃらけた笑顔を浮かべながら、コイルは首を傾げ、両手を軽く上げてまいったのポーズをとる。



「噂?」



「君との婚約の話だよ」



私がしようと思っていた話をコイルが先に話題にしてくれたので、私は内心でコイルに親指を突き立てる。




「ライちゃんから聞いたけど、確かに不可思議だよね。ライちゃんは今、僕の魔法薬の副作用で魔力が著しく低下してる。それなのに君を召喚できるなんてさ。魔法学的には有り得ないんだよね」




「…………」




コイルの言葉にメロウはじっと黙り込んだ。




「君が本当にライちゃんに召喚されたのなら、ライちゃんが君を召喚した瞬間だけ魔力が強化されて君を追い抜いたか、ライちゃんが聖女の生まれ変わりかだけど、どっちも有り得ない」




「……なぜ?」




「え?」




思わぬメロウの反応にコイルはキョトンと首を傾げる。




「なぜ有り得ないと断言出来るんですか?」




「根拠ならあるよ。ライちゃんが召喚したのが君じゃない誰かだったら、今のライちゃんでも十分可能性はある。ライちゃんは元々強い魔力の保有者だからね。だけど君は別格だ、そのことは他でもない君自身がよく分かってることじゃないのかい?」



(そうだそうだ!いい加減白状しろ〜!)




内心でコイルに加勢し、拳をつきあげつつも、一度メロウを振り返った。




するとメロウはなんとも満足気な笑みを浮かべ、制服のブレザーを脱いで私に手渡すと、次はワイシャツのボタンまで外し始めた。




何事かとコイルと私がポカンと見守っていると、メロウはそのまま左側の前みごろの部分を自らペロリとめくり、左胸に烙印の様に施された微かな白銀に光を放つ魔法陣を見せ付けて笑った。




「コレが証拠です、僕がライに"求められた"証はここにあります」

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