第7話


拝啓、前世のお父さん、お母さん、助けてください。



男子生徒達に絡まれた一件から、はや3日が過ぎ、学園内には私がホワイト家の次男である、メロウに求婚したという噂が広がってしまいました。




(いやいやいや、こんなルートありえないって!!)



「ライ"ちゃん"、どうしたのぉ?ずいぶん追い詰められてるねぇ〜」



「………誰のせいだと思ってるんですか」




頭を抱え、研究室の机に突っ伏している私の顔をコイル・キャロラインがおちゃらけた笑顔で覗き込んできた。




"コイル・キャロライン"



この聖クラレント魔法学校の生徒にして唯一魔力を持たない生徒。




魔力が無いのにも関わらず、コイルがこの学園に入ることが出来たのは類まれなる頭脳を持っていたからだ。



現に今でも学生の身でありながら魔法省の魔力研究開発所に出入りしており、ライの父と共に研究員として務めている。




(ライはお父さんが自分じゃなくてコイルを研究のパートナーとして選んだことにかなりショック受けてたっけ…)




私はコイルのおちゃらけた笑顔を眺めながら推しを憂いていると、コイルが「わあ、目が合うー」と私の腫れていない方の頬をぷにぷにと指で押す。




「ちょ、やめてくださいよ。それより噂がどうしたら収まるか考えてくださいよ、半分はコイル先輩のせいなんですから!」




「え〜?半分?噂に関しては君自身が招いたことじゃないか。ホワイト家の男子を"君が"召喚して、彼がそれに応えた。聖なる騎士は一度決めた"ロード"は決して違えない。それが男女間であればそれはもう求婚同然なのは当たり前じゃないか」




「だから私は呼んでないんですって!」




「でもメロウ氏は君の召喚に応えたんだろう?」




「いや、だからそもそもメロウより格下の私がメロウを呼び出せる訳ないじゃないですか!物理的に無理ですよ!普通に探してたら見つけたってパターンに決まってる!」




「となると君はメロウ氏が君に召喚されたと嘘をついてるって言いたいの?」




キョトンと首を傾げるコイルに私は思いっきり頷いた。




「そうです!」



「どうして?」



「は?」



「どうしてあのメロウ氏が君にそんな嘘をつくのさ?」




「え…それは…知りませんけど」



コイルの問に私が口ごもると、コイルはまたおちゃらけた笑顔を浮かべながら私の鎖骨の下辺りを長い指でツンと押した。




「彼が嘘をついてるかどうか確かめてみたら良いんじゃない?」




「確かめるってどうやって?私、今ほとんど魔力無いんですけど」




「この件を確かめるのに魔力なんて要らないよ」




「え、本当?」



「本当」



「ど、どどどどどうしたら!?」



ようやく見つけた活路に、私が目を輝かせてコイルを見ると、コイルは変わらぬおちゃらけた笑顔を浮かべたままスっと私の隣に腰を下ろし、私の肩に手を置いた。



「知りたい?」



「知りたい!」



即答する私をコイルはその長い髪と同じラセットブラウンの瞳を細め、私の肩に置いた手をゆっくりと下へ下へと這わすように動かしながら続ける。



「じゃあ、よく聞いてね」



「はい!」



「まずは彼の服を脱がす」



「服を脱がす!フンスッ!(鼻息という名の気合いの音)」



「そしたら君の手で彼の心臓の辺りに触れるんだ」




「ほうほう!」



私が夢中になりながら相槌を打っている内に、コイルの手はとうとう私の鎖骨を越えて左胸へと到達しようとしたその時、研究室の扉が乱暴に開き、振り返るとまさに鬼の形相をしたメロウが立っていた。

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