第16話

そのまま彼に向けて突進していたのだ。



ただそれは、ぐっさりと肉を抉る感触なんてものではなく。



驚きざまに、けれどあたしの身体ごとの攻撃を受け止めながら脇でナイフを空振りさせられていた。



だからこそ次なる手段は身体ごと押さえ込まれる前に押し倒さないとって。



本能が殺されることを拒むままにあたしはその男の足を引っ掛けて馬乗りになり、



交わされたナイフを握りしめて高々と目の前の男に向けていたのである。



その一連の行動に、男は黒髪の合間から月と同じ色をした瞳を軽く開かせていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る