第55話 ハッピーエンドへの布石
私に助けを求めてくれた――私が助けないといけない少女の一人、フランがいた。彼女をこんな場所から連れ出して、アリサちゃんを見つけられれば、文句なしのハッピーエンド。
そう思っていたのに――。
フランが笑顔を浮かべて何かを言ったと認識した瞬間、彼女は私に目掛けて手刀を繰り出してきた。
突然の不意打ちに頭が真っ白になりながらも、決して長いとは言えない魔法少女として培った戦闘本能が反射的に私の体を動かす。
それでも回避行動に移行するのが少し遅かったのか、勢いよく突き出されたフランの手刀が私の右肩を抉る。
「っ……!」
痛みを知覚すると同時に、私の体は意識を置き去りに生存本能に従って動く。床を蹴って跳躍して、フランと距離を取る。
そこまでして、ようやく思考が体に追いつく。
助けようとしたフランに攻撃をされた。
その事実が飲み込めず、再び思考が止まる感覚に陥る。
肝心のフランは笑顔を一切崩すことなく、残念そうに呟いていた。
「やっぱり避けられちゃうか。それでも、大分動揺は誘えたようだし、概ね不意打ちは成功したって言えるかな?」
あざとらしく首を傾ける仕草に、場違いながら可愛らしいと感じてしまうが、混乱は収まりそうにない。
どうして、私は攻撃をされたのだろうか。そんなことをしたフランは、どうして笑っているのだろうか。
理解できない。理解できない。
思考の迷路に立ち入り、呆然と立ち尽くす私の姿に、フランはより一層笑みを深めた。
「今のアマテラスが考えていることを当ててあげようか。『何で、私が攻撃をされたのか。その理由が分からない』って所かな?
その反応は合ってそうだね。うふふ。正解を教えるのはつまらないから、特別に二択の選択問題にしてあげる。
選択肢の一つ目は、さっきの不意打ちや、幼気な少女を捕まえて『改造人間』を作ったり、その他諸々の悪事は自分の意志で行っているというもの。
二つ目の選択肢は、僕も哀れな被害者で今も物凄く悪ーい人に操られて自由に動けない。助けを求めることもできない。
アマテラスは、どっちだと思う?」
フランの言葉が耳に届く。
そうだ。これまでのおかしなことは、フランを操っている奴が全て仕組んだことだ。そうに違いない。
そうであるなら、私にとって都合が良い。
「……分かっているよ。フラン。貴女が私に助けを求めているのは。
貴女を脅している悪い奴は誰? どこにいるの? そんな奴、私がちゃんと殺してあげるから。
だから、安心して。ね?」
そう問いかける。
しかし、フランを敵の支配から解放するには一体どうするべきだろうか。
考えろ、考えろ、私。
アリサちゃんが操られていた時は、私は何をしただろう。
確かあの時の私は新しい魔法の力を使って、目には見えないアリサちゃんを縛っていた魔力の糸のようなものを斬った。
似たような操り方であるのなら、同じ対処法で解決できるはずだ。
何故か黒く染まっている刀身を、フランの方に向ける。
いきなり武器を向けられたせいか、彼女は少し驚いた表情をした。
「大丈夫、大丈夫。別にフランを傷つけたい訳じゃないの。貴女を操っている原因を、これで取り除けるはずだから」
私の意図がきちんと伝わったのか、近づいても先ほどのように攻撃をしてくる素振りはない。
「じゃあ、行くよ。フラン」
刀を振り下ろす。特に何も斬った感覚はないが、フランの周りには何も異常はない。
フランが私に声をかけてきた。
「ここはまだ危ないと思うから、ウィッチ……じゃなくてアリサ……? っていう子も連れて、僕と一緒に来てくれる?」
庇護欲を唆るような表情に、私は迷わず頷いた。頷いてしまった。
――そこで、私の意識は途切れてしまった。
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