第2話 作り物であると知っているが故に
【コレより、一週間に渡る『ニューイヤーイベント』を開始致します。指定の魔物を討伐する事で限定アイテムを入手し、交換する事で様々な品を入手出来ます。
また、一部住人には特殊な期間限定依頼も発生しており——】
我がこの世界を作り物だと理解した時、この様な【あなうんす】と呼ばれる物が聞こえる様になった。……人々で言う『神の声』で、星降り共が【あなうんす】やら【公式】だのと呼んでいるのを聞いた事がある。
そして——
「……何に使えと言うのだ」
食べ物の調達がてらに近場の魔物を狩った時、魔物から素材が排出されるのと共に【無記入の年賀状】と呼ばれる紙も一緒にドロップした。あなうんす、とやらが言っていた限定アイテムらしい。
そう、我もまるで星降りの様な恩恵……いや、呪い? それらの類いに罹ってしまったのだ。
魔物を殺しても死体は残らずドロップ品へと姿を変え、イベントなどと言う日にはこの様な使い道の無い物も入手出来てしまう。
……まぁ、コレらは別にそこまで問題無い。『期間限定』と言う言葉通り、いつの間にか物が消えるのだから。
まるで世界を見る目が変わったかの様な感覚。いつまで経っても慣れないし、気色悪い。世界を荒らす星降り共と同じ視界だと思うと更に酷い。
「……ふむ。折角なら、その交換出来るアイテムとやらを見に行ってみるか」
なに、ちょっとした気まぐれ……暇つぶしと言う物だ。
散々星降り共の事を嫌ってはおるが、それはもしかしたら我が星降り共の事を知らぬからなのかもしれない。
……皆揃って似た様な精巧な作りの顔しかないのは不気味だがな。
さて、確かアイテムとやらを交換するにはこの【無記入の年賀状】とやらが必要だったはず。……だが、我が一撃で倒せる程度の魔物から落ちた物だ。たった一枚では何も交換出来まい。
「奉山にでも寄るとするか」
魔物の巣窟である奉山と呼ばれる山……そこに住む魔物を殲滅すれば充分な数を得られるだろう。
あそこはどれだけ狩り尽くそうとも無尽蔵に魔物が湧くからな。暇つぶしとしても中々に優秀ではあるのだ。
◇◇◇◇◇
奉山に住まう魔物を狩れば案の定【無記入の年賀状】が落ちた為、取り敢えず感知できる範囲の魔物を殲滅して集めてから、我は人里へと降りて来ていた。
知り合いも居なければ、来る用事すら無かったが故に人の住まう地になぞ久しぶりに足を踏みれ手が……ふむ、やはり中々賑わっておる。
ただ……
「星降りだけでは無いな……感じる視線が多い」
そんなに我の姿が珍しいのだろうか?
確かに白髪赤眼の中性寄りで、美少年とも美少女とも取れる様な姿をしているとは思うが……言っても星降り共も似た様なのばかりだ。我だけが特殊では無い。
それともなんだ? 我の背中に生えておる翼が気になるのだろうか? いや、それにしてもおかしな話だ……星降り共も偽物とはいえ、翼などを付けているのだから我だけが特殊な訳では無いだろう。
「む、此処か。星降り共が根城とする【ぎるど】と呼ばれる場所は」
視線を鬱陶しく感じながらも辿り着いた場所は【ぎるど】と呼ばれる【依頼】だの【くえすと】だのを受ける場所らしい。
事前に聞いていたあなうんす、とやらに寄るとこのぎるどとやらの中で物を交換できるのだとか。
建物の扉を開き、中に入ると……そこには星降り共の群れが。
少々制圧魔術にて消し飛ばしたくはなるが、奥に見える一般の者の姿を確認して描き掛けた魔法陣を消失させる。
……あくまで物の交換が狙いであったな。無駄な殺傷なぞすべきでは無いか。
第一、此処にいる星降り共全員が我の敵、と言うわけでもあるまいしな。
「ふむ……おい、星降り。かの【いべんと交換】とやらは何処で出来るのだ?」
「はぁ? アンタ誰だよ。急に服なんか掴むんじゃねぇよ」
「我が質問しておるのだ。黙って答えよ」
「はっ、プレイヤーネームすら隠してる臆病者に教える義理はねぇ。ロールプレイか何かは知らんが人としてのマナーぐらい——」
「……所詮は星降り、か」
我と愚図な星降りの会話によって静まっていたギルド内に、『パンッ!』と何かが弾ける様な軽い音が鳴り響いた。
所詮は星降り。何度殺しても蛆虫の様に湧き出る存在だ。殺しても大した問題にはなるまい。
「さて……では貴様。先程の愚図みたく醜い花火になぞなりたく無かったら答えよ。【いべんと交換】とやらは何処でやっておる?」
「ヒィっ! あ、あそこの【イベント受付】って言う所ですぅ……」
「ふんっ……最初からこうすれば良かったな」
星降り共に遠慮なぞ要らん話だったな。
そこら辺から引っ張った星振りを放り投げ、聞き出した【いべんと受付】とやらの場所へ直行。
? あぁ、恐怖しておるのか。星降り共が柄にもなく道を開けるから一体何をしているのかと……
たかだか星降りを一匹破裂しただけで随分な反応だな。ふむ……星降りにも恐怖心はあったか。
てっきり死になぞ耐性があって恐怖なぞせぬ物かと思ったんだがな。
「此処でアイテムの交換が出来ると聞いたのだが、どうすれば良いのだ?」
「申し訳ありません。蜷ク陦様は現在、ギルドに加盟しておりませんので対応をする事は出来ません。
まずはギルドへ加盟する事から始めて頂ければ幸いです」
「むっ、ぎるどとやらに加盟せねばならぬのか……その加盟とやらは何処で出来る?」
「加盟でしたらあちらの総合受付にて出来ますよ。今後の蜷ク陦様のご活躍をお祈りしております。頑張ってくださいねっ!」
「……うむ」
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