クリア不可能コンテンツの吸血王さん、街に出る

冰鴉/ヒョウカ

第1話 目覚める朝日は血と共に

 いつからだろうか……この世界が作り物だと感じる様になったのは。

 いつからだろうか……【星降り】などと言う現象で死すら恐れぬ戦闘兵が大量に現れたのは。


 ……いつから、だろうか。この我が、【エンドコンテンツ】などと呼ばれる様になったのは。


 ◇◇◇◇◇


「おしっ! 今日は先約が居ないみたいだな。早速腕試しだ!」


「……また貴様か、人間。何故我を襲う」


「そりゃあエンドコンテンツだからな! 1プレイヤーとして挑まない訳にはいかないだろ!」


「……訳がわからぬ。何故恨みつらみでは無いのに命を狙われねばならぬのだ」


 また、今日が始まった。【しすてむ】と呼ばれる物で世界の昼夜が切り替わり、世界を照らす太陽が昇った頃……1人の星降りの人間が我の前に立った。


 その人間はどうやらこの我を殺したいらしい。それも特別な意思なぞ無く、ただ【エンドコンテンツ】と言う意味で。


 ……不愉快だ。我とてこの世界の行く末を見守って来た者の1人。突如現れ、世界を荒らし回っている星降り共に殺されるなぞ——薄っぺらい意思で立ち向かわれるなぞ、不愉快極まりない。


「貴様は我を誰と心得る。我は——」


「スキップ」


「……『すきっぷ』とな?」


「最初はカッコよかったけど、何度もムービー挟まるのは正直邪魔だよなぁ。俺的にはもっと優しいイチャイチャでも——」


「……そうか。貴様は名乗りすら知らぬ無礼者であったか。やはり星降り共は——」



「この世界には、要らぬな」


 我は血を生み出し、一振りの浮遊する紋様を生み出した。


 我の技能は至って単純——血を生み出し、操作する事。

 だがただの血と侮るなかれ。血は非常に豊富なエネルギーを含んでおる。その血を上手く扱えば——


「うぉぉあっぶねぇっ! やっぱりエンドコンテンツだからってレーザーとか無茶苦茶し過ぎだろ!」


「……愚図とは言え、ここに辿り着ける程の技量はあったか。益々腹立たしいな、貴様程度の者が力を手にするなぞ」


 血を操り魔法陣を描き、そこから超高温の光線を発車させる魔術……並大抵の者であれば抵抗出来ず焼け死ぬと言うのに、目の前の男はまるで『来るのを知っている』かの様に避けて来た。


 全く不愉快だ……星降り共は生き返るせいで情報を持ち帰られてしまう。大方、こやつも誰かが持ち帰った情報を何処かで仕入れたんだろう。もしくは、過去に我が殺した星降り本人か……


「いくぜラスボスっ! お前を1番に倒すのはこの俺だぁあああ!!!」


「思い上がるな、力を意味なく振るう雑魚が」


 地面を血で染め上げ、足を取りながらも血の鎖を生やして男の身体を拘束ある。

 ……が、何処で知ったのやら。この技の対抗策である【回復薬を地面に撒く】と言う方法で男はこの窮地を脱した。


「うぉぉぉおおおお!!!」


「……穢らわしい」


 男の顔が近づいてくる。まるで作り物の様に人にとって美しいとされる顔だ。……不気味でしょうがない。どの星降り共も似た様な見た目で。


 即座に魔法陣を描き、魔術を発動。発動するは【隔離】——別空間にて我の分身と戦わせる魔術だ。

 此処で戦えば我の城を壊してしまう。……幾ら魔術で簡単に直せるとはいえ、長年住んできたこの場所を傷付けるのは少し心が痛い。


『ウッソだろ最初からコレかよ!? ま、まぁ……なんとか乗り越えるぞ!』


「……喧しい」


 分身とて我の……まぁ10分の1程度の実力はある。愚かにも力を手にした愚図程度なら倒せるだろう。


 これが日常。これが、我の生活。


 何もしていない。ただ、生まれた時から強力な力を持っていただけなのに……何故、我は命を狙われねばならぬのだろうか。

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