第27話
風は、英語の翻訳を依頼されたことをきっかけに「もっと多くの言語を学べば、この時代でさらに力を発揮できるかもしれない」と感じ始めた。商人たちが持ち込む外国の書物には、英語以外にもさまざまな言語が記されていた。そのため、風は翻訳の合間に新たな語学を独学で勉強し、少しずつ読み解ける範囲を広げていった。彼女の勉強部屋には異なる文字や語彙を書き留めたメモが増え、その様子に周りの人も驚きを隠せなかった。
「風さん、本当にすごいの。どんどん新しい言葉を覚えて、外国の本を読みこなしているんだから。」
とはいえ、仕事に没頭しすぎるのも疲れるため、風は時々気分転換に剣道の稽古を緋之助と行うことにしていた。昔から鍛えていた剣道を、気晴らしの遊びのように楽しみながら、日頃のストレスを発散する。お寺の庭で竹刀を交えながら、時折お互いに茶化し合いながらの稽古が、風にとっての心のリフレッシュの場となった。
「よし、次こそは本気でいくぞ、緋之助!」 「待ってくれよ、風さん。こっちは仕事明けなんだから!」
一方、千歌は、デザインだけでなく、イラストにも力を入れ始めていた。元禄時代の人々にとって斬新な洋風のタッチや色使いが取り入れられた千歌のイラストは、周りから「可愛い」「見たことないデザイン」と注目され始める。彼女は和紙や日本画の絵の具を使い、令和時代風のポストカードを作成。その独特の絵葉書が、商人や観光客たちの間で話題となり、売れ行きも上々だった。
「千歌さん、この絵葉書、ちょっとしたお土産として人気なんです。たくさん作ってくれませんか?」
千歌は、喜びと驚きを隠せなかった。「私の絵がこんなに受け入れられるなんて…嬉しいな!」
風は翻訳で、千歌はデザインや絵葉書の販売で、それぞれ収入を得るようになり、お金が少しずつ貯まっていった。二人は、自分たちの仕事が元禄の人々にとっても価値あるものとなり、令和の知識と感性が新しい生業として確立しつつあることを実感する。稼いだお金で、少し贅沢にお茶を楽しんだり、欲しかった小物を買ったりと、二人の生活にも少しずつ余裕が生まれてくるのだった。
お寺の縁側でお茶を飲みながら、二人は未来のことを語り合った。
「風、私たち、この時代でもやっていける気がしてきたね。」千歌が微笑んで言いった。 「うん、今は毎日が新しい発見で面白いし、自分のスキルがここで活かせるなんて思わなかったよ。」風も同意する。
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