第31話
少し気持ちが落ち着き
ふと、昨日の夜のことを思い出す…
お父さんは無言で家の中をウロウロしていて、
私はそういう姿を見るだけでも辛くて精神的に参っていて……
今まで溜まっていたものが爆発してしまったんだ。
お父さんに強い口調で
「もう早く寝たら?」
と冷たく言っちゃったんだよね。
私は怒ったことがなかったんだけど、このとき生まれて初めて怒ってしまった。
お父さんが死んだのは私のせいでもあるんだろうなと思う。
ごめんなさい……
冷たいこと言ってごめんなさい……
お父さんは身近な人や私に遺書を残していた。
それはパソコンで文字を打って印刷したものだった。
遺書...
"由梨がこの遺書を読む頃には、お父さんはもうこの世にはいないと思います。
どうして、このようなことをしてしまったかというと、自分が過去において犯してしまった罪を償わなければならないからです。
表向きには何もしていないように振舞いながら陰の部分で人間としてやってはいけないようなことを繰り返してしまったからです。
それは人間として卑怯で自分勝手で醜いことだったと今になって思います。
周りの人たちは「やり直しができるのだから、死んだ気になって頑張れば。」と言ってくれたりしますが、どうやら一度断ち切らないことには収まらないようです。
お父さんがこんなことをして、由梨にどれだけのショックを与え、また周りの目もあり、由梨のこれからの生活に障害を与えてしまうかということを考えると、中々実行に踏み切れずにいました。
でも、ある意味では人間失格してしまったお父さんが傍にいるよりも由梨にとってはいいのかも知れません。
言える資格はありませんが、人に迷惑をかけないような人間になって下さい。
本当に申し訳ない、お母さんからも由梨のことを託されておきながら、自分自身の始末も出来ないばかりか、由梨をこのような目に合わせてしまって。
でも、由梨はお母さんともお父さんとも違う、一個の人間です。
辛いだろうけど頑張れば乗り切っていけると信じています。
本当はいつまでも一緒に居たかったけど、やむを得ないことのようです。
名残惜しいけど、さようなら。
無責任な父親で本当に申し訳ない。"
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