第26話
そのあとはあまり会話をすることはなく私達はただ眠るために家に帰った。
抜け殻のように身体に力が入らなくて、心にぽっかり穴があいたようだった。
家に着いてお母さんのことを思いながら横になった。
中々寝付けなかったけど、気付いたら寝ていて…
お母さんの夢を見た。
お母さんが上からフワーっと降りてきて、言葉を発さずにパンダのぬいぐるみをただ私に差し出す夢。
言葉は発していなくても、お母さんはこのパンダのぬいぐるみを棺に入れてほしいんだということが不思議と分かった。
このぬいぐるみは私が中学の家庭科の授業のときに作ったもの。
うまく作れなくて捨てようかなと思ってたけど、お母さんが大事にとっておいてくれてたんだよね。
嬉しかった。
お母さんはいなくなってしまったけど、
想いを届けたいと思って
私は手紙を書いた。
苦しみから開放されてよかった
夢で旅行に行こうね
見守っていてね
大好き
長々とそのとき思ったことを書いた。
棺にはぬいぐるみと一緒にその手紙も添えた。
棺の中のお母さん…
お母さんなのにお母さんじゃないみたいだった。
偽物なんじゃないかって思った。
お通夜、お葬式が終わってもお母さんが居ないなんて実感がない。
まだどこかにいるんじゃないか。
街で歩いていたりしても探してしまう私がいた。
でも、似ている人がいてもお母さんじゃない...
時間が経つごとに、もういないんだってやっと実感するようになった。
お母さんと一緒に居た時間が遠ざかっていくのが辛かった。
記憶が薄れていくのが辛い…
会いたいし話したいのに何をしてもそれが叶わない。
もう、本当にいないんだ。
まだ親孝行も出来ていないよ。
色々と後悔が残る。
お母さん…
「子供の頃、健康優良児で表彰されたんだよ」
って私に自慢気に話してたのにどうして癌になったの…?
どうして死んじゃったの…
まだ40歳だよ。
もっともっと一緒に過ごしたかった。
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