第6話

身なりが変わってもお母さんは私に対する態度が変わるようなことはなかったし、お父さんともいつものように仲が良いかんじだったから派手になっていくのは悪いことではないんだなと思っていた。






そう思っていた矢先……





悪いお母さんが見えてくるようになった。






「お父さんには内緒だよ」とお父さんの知らないところで隠れてタバコを吸っていたり…






ふと、タンスを開けたら中に偽物か分からないけど、拳銃が隠されていたときもあった。







びっくりした。






どうしてこんなものがあるんだろう










素直に思った。







でも、そのままの気持ちをお母さんに言うことが出来なかったんだよね。







私はこれを言ったら相手は都合悪いかも、嫌な気持ちになるかもと思うことは中々口に出来なかった。








そうなる前は、お母さんに思ったことを言うこともあったけど、うまくはぐらかされたり、言いくるめられて終わることが何度もあった。



言っても意味がない、自分が嫌な気持ちになって終わるなら言わないほうがいいか…と、言うことを諦めるのが癖になっていた。







そしてもうひとつ…



自分の気持ちをそのまま言葉にすることが難しくなったきっかけとなったんじゃないかなという出来事があって。




 


私は学校で何かの係をやっていて、帰りの会のときにみんなに伝えなきゃいけないことがあったときのこと…





普通に手を上げて普通に話せばいいことなんだけど、私にとって人前で話すというのはすごく勇気がいることだったんだよね。







小学三年生くらいの頃から何がきっかけになったのか分からないけど、私は悪口や無視のいじめを毎日のように受けていたし、物が無くなったり、私の机がガタガタのボロい机に変わっていたり、机を離されたりとか、暴力はないものの色々とあって…



一部の人達だったけど、男子にも女子にもいじめられていたんだ。



その他の周りの人達はみんな見て見ぬふりをしていた。




私は何もしなくてもみんなから注目を浴びてる毎日なのに…


自分からあえて注目を浴びるようなことをするのは本当に嫌だった。




でも、みんなにちゃんとこのこと言わなきゃ……




頑張るしかないと思って勇気を出して手を上げた。





そして話し始めたんだけど、そのとき男子から悪口を言われて…






頑張って勇気を出したけど、辛くて逃げ出したい気持ちになった。




私は言い返したりすることが出来なくて、ただ静かに悲しむことしかできなかった。




こんな自分が恥ずかしいし嫌いだった。





そういうことがあってからかな…





相手や自分が嫌な気持ちになるかもと思うことはあまり口に出来なくなった。





勇気を出して言ったとしてもうまくいかない、傷つくだけって思うようになった。





言おうと思ったとしても言う前から心が疲れてしまうんだよね。



だから相手が都合悪いこと、嫌な気持ちになることは言わないで我慢すればいいんだ。




見なければいいんだ。






そういうことは考えないようにして、楽しいことを考えようって思った。





いわゆる現実逃避。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る