第10話 常識か。と思ったら人それぞれだった。

 さて、アランとメルと僕の三人は王都からほど近い、ミリアという村に向かっていた。

 件の大蜘蛛討伐というのが、ミリアの村に面した森の少し奥にいつの間にか巣を作った大蜘蛛を倒せというものだった。

 僕たち三人は、なにはともあれ、ミリアの村で聞き込みから始めることにした。


 王都からの道のミリア近郊の田園地帯に入ると、畑を耕していた農夫が、こちらをきょとんと見つめ、肩から下げていた手拭いで汗をぬぐって、こちらに手を振ってきた。

 農夫の近くに行くと

「やぁ。あんたら、冒険者かい?」

と声をかけてきた。


「ええ。王都から大蜘蛛退治にやってきました」

三人の中で自然にリーダーらしくなったアランが答えた。


「へぇ~。あんたらずいぶん若いねぇ」


「ルーキーです。頼りなくて申し訳ない」


「いやいや。大蜘蛛なんてモンスター、ルーキーぐらいしか相手にしないわな」

「村の男どもも立ち向かったんだが、小物とは言え相手はモンスター、おら達も命が惜しいでよぉ」


「大丈夫!きっと期待に応えます!」


「ありがて~なぁ」


 そんな感じで、村に入るまでに、農夫や子供などに何回か遭遇したが、アランがうまく対応してくれた。僕は持ち前のコミュ障を発揮して、後ろのほうで時々相槌を打つぐらいで黙って立っていた。


 その後、村でも聞き込みをして、わかったのは、大蜘蛛が居付いたのは今から一ヶ月前ほど。その後、村の家畜が何頭かやられ、村の男たちが駆除しようと試みたが、ロクな装備も持っていない農民には手ごわく、村の男たちは逃げ出したようだ。死者こそ出なかったが、ケガ人が数名。困った村人は皆でお金を持ち寄り王都の冒険者ギルドに依頼した。そういうことらしい。


 僕はアランにたずねてみた。

「どこの世界発祥のモンスターかな?」

なにせ、この世界の常識が僕にはわからない。勇者という肩書を隠している以上、それっぽく聞いてみた。

 アランは

「どこのって、モンスターはモンスターだろ?確かになかには友好的なモンスターもいるらしいけど。」

「神話で言うところのって意味?まぁこのてのモンスターは、だいたい『ファンタジー界』とか言うけど……」


 なるほど、この世界でも、人によって知識も考えも違うらしい。帰ったらパウルに聞いてみよう。


 僕たちはとりあえず村人からも何度か言われた通り村長の家を訪ねてみた。

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