第11話 小さなおっさんか。と思ったら小人族だった。

 村長の名はオーガスといった。

 一通り村長と挨拶、情報交換、世間話を済ませたが、大体は今までに村人が話した内容と変わらなかった。その他村に伝わる不思議な話なんかも少しされたが、それは今回の件とは全く関係なさそうだった。

 一通りの話が終わると、村長は

「イサ。イサはいるか?」

と、人を呼んだ。

「ほいほい旦那様、何でございましょう?」

と表れたのは、年齢不詳の小さな男性だった。

背丈的に小学生ほどだが、子供か?と言われたら違和感があるし

かといって、背の低いおっさんか?と言われたらそれも違う気がする。

「こちらは、イサという。我が家に仕えてくれている召使だ」

「イサ。この人たちが大蜘蛛を狩ってくれる。手伝うように。とりあえずは、離れで、疲れをとって食事でもしてもらってくれ」


「わかりました。旦那様」

「ささ。お坊ちゃんたち、こちらにどうぞ」


 僕たちは、イサと紹介された小さい人の後をついて屋敷を出た。

 僕はアランに

「ね。ね。この人」

と言うと、アランは

「ああ。ホビット族だね。この辺りではあまり見ないけど……」

と応えた。


 ああ。なるほど、道理で大人にも子供にも見えないわけだ。


 イサは

「御用がございましたら何なりと、たぶんあっしが道案内もすることになりますぜ。逃げ足には自信がありますんで、あっしのことはご心配なく」

と、村長の離れの小屋の扉をあけながら言った。


「どうぞよろしく」

アランが短く応えた。


 離れに通されると、イサは

「それでは、お食事の用意をいたしますので、どうぞ気兼ねなくごくつろぎください」

と、言って、母屋のほうに帰っていった。


 離れは、小さな村の村長の屋敷なので、取り立てて豪勢なわけでもなく、手入れはイサ達使用人がしているのか行き届いているが、古びた木造りで、大きさも、日本の昔の家屋の離れ程度。客室も兼ねているのか、二人が向かい合わせに座れるソファーテーブルに、これもあまり豪奢でもみやびでもない、木製のベットが二つ置かれていた。


 これは三人だと僕はアランと同じベットか?と変な心配をした。


「こういうの楽しいな」

アランはベットに腰掛けボンボンしながら笑ってそういった。

確かに、修学旅行みたいな雰囲気になってきた。

でも、このままいけば明日には大蜘蛛と戦闘かも。


 ときに、この依頼の30シルバーだが、

100カッパーが1シルバー。100シルバーで1ゴールド。

30シルバーは3000カッパー程度だが、町で売っていたパンが大体10カッパー程度、オルトさんの宿が一泊7シルバー程度なので、日本で考えると3万円ぐらいの価値になるだろう。

 そう考えると、3万円で命を捨てる馬鹿はいないが、こうして寝床や食事を提供され、二日ほどの労働で3万円。駆け出しの冒険者が受け取れると考えると妥当な筋なのだろう。

 このあまり裕福に見えないミリアの村人たちが3万円を持ち寄りギルドに依頼、というのも、まぁ、そんなもんだろうなと思う。

 むしろ、そこそこの冒険者なら、ちょろい仕事で3万円のはずだから、もっと受けてもいいと思うが、冒険者の稼ぎはそんなに悪くないんだろう。


「みてみて、タケル」

「じゃーん。ブロードソード!」

アランが無邪気に自慢げに腰の幅広刀を抜いてみせてきた。


「チェーンメイルにブロードソードにカイトシールドか、すごいね」


「へっへー」


「アランは前衛戦士?」


「そう!男はバシバシっと敵の攻撃をさばいて味方を守る!」


 オンラインゲームでも、PTメンバーの装備の確認とかよくしてたな。

 自分もオンラインゲームのノリで

「じゃ、これとこれ。あげるよ」


 僕は、アイテムボックスから、ネックレスと指輪をつかみ出して、アランに渡した。


「お?なになに?」


 アランは、無警戒にそのネックレスと指輪をつける


「お!お!」


アランは何か感じたのか、ブンブンと剣を振って、盾を構えた。


「すげー!」

「これなんて言うか。攻撃のキレが良くなった気がするし、盾を構えた時も守られてるって感じがする!」


 ご名答。僕がアランにあげたのは、守りのネックレス(防御力+16)と力の指輪(攻撃力+12)という代物。そんな大した装備ではないので、アランが持っていても多分それほどおかしくはない……はず。


「でも、いいのか?高かっただろこれ?」

まぁ、アクセサリー類はどの世界でも安いものじゃないかも。

「いいのいいの。その代わりしっかり戦ってくれ」


「おぅ!そういうことなら!」


 僕はどうなるか知らないけど、もしモンスターに負けたら、アランもメルも死んじゃうんだよな……


 そんなこんなで、3人でギャーギャーワイワイやりながら、その日は離れで寝ることにした。ラッキーなことに、客用の布団があったので、ベットは二人に譲って、自分は床に布団を敷いて布団で寝た。


 イサさんの作ってくれた、貝のリゾット風の食べ物。おいしかったな。


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