第22話 クラースとエレナ
「えぇっ!お師匠様と6時間も魔法談義をしたのですか?なんてうらやましい!」
エレナが素っ頓狂な声を出す。
「ふふふ。とても有意義な時間であっというまだったよ。流石はマーリン様。話しているだけでいろいろな気づきやアイデアが次から次へと生まれてくることよ。今度もまた魔法談義をお願いしてみることにしよう。」
娘のエレナに対してドヤ顔をするクラース。
前々からエレナから、マーリンと魔法談義をしては新発見しているという自慢話を効かされまくっていたクラースの意趣返しである。
「お父様!私もっ!今度は私も呼んでくださいね!」
「呼びたいのも山々なんだがな。エレナはエレナで、魔法師団の仕事がとても大変なのだろう?今日も久々の家族揃っての食事ではないか?」
「そうなんですよ。いまいろいろと魔法師団の方で、前回の魔物襲撃の反省を活かして、いろいろな見直しや訓練を抜本的に変えて行っていますからね…こちらの件についてもお師匠様にご助力いただきたいくらいなのです…。お師匠様は理事長の仕事があるようですし、あまりおいそれとお願いするのもどうかなあと思ってまして。」
と、頭を抱え込むエレナ。
「ふむ。マーリン様に一度話をしてみようか。まだ理事長としての仕事も本格的に何かあるかというとそうでもないからな。むしろ今の段階のほうが時間を取りやすいかもしれない。」
「本当ですか!!お父様!ありがとうございます!」
と、ガバっと起き上がってクラースの方に熱視線を向けるエレナ。
「ふふふ。明日早速聞いてみるよ。話は変わるが、エレナから事前に聞いていたから注意深くマーリン様の観察をしていたのだが、まったくもって魔力の揺らぎであったり、魔力隠蔽している綻びがまったく見つからなかったよ。」
「お父様でも見つけられなかったのですね!」
「ああ。6時間もあれば少しくらい分かるかなとも思ったが…。つくづくマーリン様と自分との間にある越えられない壁を感じてしまったよ。本当に魔力が全くないようだった。あれは相当な隠蔽技術であるし、とんでもない魔力制御技術だよ。ぱっと見、この学園都市の一般市民と見分けがつかない。前情報がなかったら、思わず疑ってしまうレベルだよ。本当に魔法使いなのか?って。」
「そうなんですよ!そこがまたお師匠様の凄さを物語ってますよね。」
「ああ。あとは、6時間ほど話していて思ったことだが、マーリン様は実は言葉に魔法を乗せているのではないか?と。もちろん魔法を使っている形式はわからない。だがそうでなければ、ここまで話が盛り上がったり、新しい気づきが得られるとは思わんのだ。どう思う?」
と、エレナに自分の仮説についての意見を問うクラース。
「確かに、そう言われてみれば私も気づいたら、お師匠様の前ではベラベラいろんなことを話してしまいますね。あまりにも自然に話が盛り上がっていたので、お父様にそう問いかけられるまで気づきませんでした。しかし、振り返ってみると異常ですものね。いくらお父様とはいえ、6時間も他の業務を蔑ろにして話し続けるのはちょっとおかしいですものね。」
「ああ。きっと巧妙に魔法を使っているのだとおもう。この魔法もあるようでなかったアイデアゆえ、研究しがいがあると思っておる。私の考えはこうだ…」
そうやって喧々諤々とクラースとエレナの魔法談義がまた始まるのであった。
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