第013話 ディスク
◆ ◆ レティナ視点 ◆ ◆
モーシュシヒル事務所の北側はこの住宅街の通りの行き止まりになっており、人通りが少ない。事前の地図上の調査でそれがわかっていたので、人目に付きにくいこの場所から塀を乗り越えて敷地内部に潜入することとした。
塀に死角が生まれないように監視カメラがところどころに配置されている。私の能力でこちらを向くカメラをすべて特定し、ティオ君が死角から水鉄砲で水をかけてカメラのレンズ表面を濡らす。その水をティオ君の《
私とティオ君は眼前にそびえる高い塀を見上げている。
「ミズアメは今日いくつ持ってきてるの?」
「何個も持ち運ぶと結構な重量になるから5つだね。それでも、今までタンクを背負って10リットルくらいしか持ち運べなかった水を、その200倍持ち運べるんだから、レティナさん様々でございます」
「ふふ、お礼は寄付金という形で研究室の方へお願いね。じゃあ練習通りにやってみてよ」
ティオ君は塀から3メートルほど離れた位置で立ち止まり、右半身を前に出して膝を軽く曲げて腰を落とす。左腰に付けた布製のポーチには私が提供したミズアメが入っており、1つだけ取り出して右手に握る。前に踏み出した右足つま先から足の長さ1つ分だけ前方の地面に向け、右手の人差し指と中指を揃えてピンと立てる。そして、腰を大きく下げてしゃがみこみ、その指先が湿った地面のアスファルトに触れる。
ティオ君が眼を見開くと、その指先に急速に冷気が集中し、周囲の大気中に生じた微細な氷が夜を照らす街灯を反射して白い光がチラチラと舞う。指が触れている地面に、横幅30センチ程度の薄い氷塊が生じる。伸ばした右手を地面につけたままそのままに、視線をゆっくりと水平に上げ、さらに塀の上端に向けて仰いでいく。その視線の移動に伴って、地面にできた氷塊からジグザクと氷の四角い平面が伸びてゆく。それは、氷でできた階段であった。
体重を支えられるように、階段3段ごとに地面まで垂直に伸びた支柱が生成されていく。
塀の上の警戒センサーの監視範囲をちょうど乗り越えるように、ティオ君は《
「いいね、練習通り。壁を超えた先には人も監視カメラもセンサーもないよ。警備の人たちも私たちに気づいていないみたい。じゃあ、私がお先に失礼します」
「了解。靴のスパイク出し忘れないでね」
制服の1つとして支給された今履いている靴は、外見は一般的なスニーカーに見える。くるぶしの少し下に小さな回転式のノブが設けられており、これを回転させると足裏にスパイク状の突起が生まれて氷面を滑らず歩けるアイゼンとして利用できる。ティオ君とのトレーニングの過程で私が提案して導入されたものだ。ティオ君が氷を一面に張った時に私の移動を助けるためのアイテムだ。
氷の上で足が滑ってしまうのは、氷を踏みしめたときの圧力でわずかに氷が解けて水の薄い膜が生じ、摩擦が低下することによるものだ。ティオ君はその解けた氷を眼で見ることなく足裏の感覚で無意識的に《
「こうして実物を見てみると、ティオ君に造形の才を感じるね」
私たちの体重を支えつつも最低限の水の消費で済むような構造的な工夫がこの氷の階段には組み込まれている。3DモデリングするためのCADソフトウェア上でティオ君が研究し、それを実現してみせた。
ティオ君の《
この氷の階段や先日ティオ君がミズアメに初めて触れたときに作った氷のオブジェを見ると、3Dモデリングが能力の成長に寄与していることがよく理解できる。特に航空機などはこだわりがあるらしく、専用の商用設計ソフトを個人購入していて実際に空力に配慮した構造を作れるらしい。ただ、制作したゲームに関してプラットフォーム上の評価を見てみると、「キャラクターやオブジェクトのモデリングは大規模タイトルと比肩するが、ゲーム性はイマイチ」といった様子だった。ゲームとしての面白さを追求してもらい、今後のメガヒットに期待だ。
塀の上端から1メートルほど上に氷の階段の頂上があり、そこからは勾配が大きくついた氷の滑り台が事務所側の敷地の地面に向けて1周程度のらせんを描くように生成されていた。バランスを崩して踏み外さないように、狭い階段をしっかりと踏みしめて頂点まで登り切った私は、そこから滑り台に身を任せて滑り降り、怪我無く着地する。私が無事に塀の向こう側へと移動できたことを確認したティオ君も、同じく氷の階段を介して潜入することができた。
着地したティオ君は立ち上がるとすぐに後ろを振り向いて、氷の滑り台に設けられた柱のうち1本をとんとんと指先で叩く。そうやって力を加える位置を入念に確認した後に、腰に備えていた金づちを柱に打ち付ける。すると、氷の滑り台全体に亀裂が伝播して、それが塀の向こう側の氷の階段まで伝わっていき、すべてがガシャリと崩れ落ちる。ティオ君は、柱の特定の箇所を破壊し、氷の階段の表面の水を弾けさせることで、この氷のアーチ全体が崩壊するように設計していたのだった。
夏場のこの暑い時期であれば、20分も経てば氷の破片はすべて水へと溶けてしまい氷の階段があった痕跡は残らない。水の跡が不自然に残ることを避けるため、昼間まで雨が降っていてアスファルトが濡れたままの今日を依頼遂行日に選んだことは言うまでもない。なお、塀に備えられたセンサーは生体の通過を検知するので、砕けた氷がセンサーに触れても影響がないことは確認済みだ。こうして、2人とも事前の計画通りに事務所の敷地内へ潜入することができた。
予め《
「レティナさんの《
「そう? ありがと。私はもうこの眼に慣れちゃったよ。女性として夜道とかは人並みに気を付けていたんだけれど、周りを見通せるから警戒することなくなっちゃった」
そんな雑談を小声で重ねながら照明がついていない真っ暗なホールの内部を入念に調べていく。事前の私の内見の通り、ホールに不自然な点は見当たらなかった。ティオ君は、「窓や避難口、消火栓がないから消防法的に心配だね」と言っていた以外には怪しい点は見当たらないようで、やはり施設自体にはトリックは無いようだった。水を利用しなければ能力を使えないティオ君にとっては、水場や消火栓に注目するクセがついているのだろう。私にはない着眼点で調査してくれている。
ホールには見切りをつけて、私達は舞台部分から直通の倉庫へと向かった。
「手前に置かれている照明用の電源ケーブルとかは頻繁に持ち出して整理しているのかな。奥の方はずいぶんとホコリっぽいね。レティナさん、そっちはどう?」
ティオ君は、リングフォンの照明機能で倉庫の入口から内部を照らしている。
「うん。奥はたぶん昔の公演で使っていた会場用の装飾品とかが放置されているみたい。少し入った先に小部屋が3つ並んでいるからそこを見ていこう」
瞬間移動だと観客に誤認させるトリックとしては、空間投影ディスプレイで人物を写したり、精巧な人形を使ったりする方法が簡単には思い浮かぶ。けれど、この倉庫を透視して見た限りでは、それに関連するような物品はなかった。全国ツアー中のため現在は持ち出しているのかもしれないけれど、重要な物品であれば予備があるのが自然だ。
それとも、世界的なマジシャンゆえ、素人には思いもしないトリックが利用されているのかもしれない。もしそうだとしたら、そのトリックの実現方法に私たちだけが理解できる心当たりが1つだけある。
私とティオ君は、倉庫内部の小部屋を手分けして確認していた。一番奥側にある小部屋には南京錠で施錠されていたけれど、錠を破壊する工具は予め準備していたので破壊して私は中に踏み込んだ。
この小部屋は、事前の透視内見で謎の円盤状の物品が大量に保管されていたところであった。実際にその円盤を直接観察しても、この物体が何であるのか私の知識にはない。直径20センチ、厚さ1センチ弱のベージュ色の円盤型の金属製の外装の内部に、複雑な電子回路と粉状の物質が所狭しと詰め込まれている。金属製の外装の滑らかなカーブを描く側面には、長ったらしい型番のような文字の中に「ディスク」と読み取れる文字列があった。
円盤の一方の面には、表面を剥離紙で保護された粘着性の物質が塗布されており、強力な両面テープのシートだと思われる。おそらく、この円盤は壁などに貼り付ける利用方法なのだろう。その反対の面には、円盤の薄さを損なわないほどの小さな物理トグルスイッチが2つ、回転式のノブが1つ配置されている。
トグルスイッチの一方には錠前のアイコンが示されており、何らかの操作のロックをオンオフする機能があると見て取れる。もう一方には太陽のように放射状に広がるアイコンが示されており、何を意味しているのかは直感的には分からなかった。回転式のノブの回りには、アナログ時計のように周囲に数字が10、30、60と示されている。円盤を1つ手に取ると、おおよそ1キログラムくらいの重量がずしりと腕に感じられた。
「ねえねえ、ティオ君。これ何かわかる?」
隣の小部屋で調査にあたっていたティオ君をこちらの部屋に呼び出した。私は暗視能力ゆえに不要であったため点灯していなかったリングフォンの照明が、この円盤の小部屋を照らし、ティオ君は部屋を1周ぐるりと眺めた。一瞬、ティオ君は呆けた様子を見せ、そして円盤が何であるのか思い当たったのか眉を上に大きく上げ、四白眼とともに驚きの表情を浮かべた。
「こっ、これ、全部ディスク!? 100個か200個以上は無いかな、これ!?」
「ざっと数えると180枚くらいあるね。ティオ君、そのディスクって何?」
部屋にある円盤から目を話し、ティオ君は私の方を向く。
「……爆弾だよ。超高性能のね。その放射状の爆破アイコンのスイッチをオンにすると、ノブで設定した秒数の後に炸裂するから気をつけてね。ロックはかかってるみたいだけど」
その回答に、私は手に持っていたディスクを慌てて元あった棚に戻す。そして、爆弾という言葉から連想されて、私の頭に2つの単語が浮かぶ。爆弾魔とガラムだ。
爆弾魔はその名の通り、予告とともに主要施設を爆破して権力者を脅かそうとする謎の犯罪者だ。爆弾魔が関わったとされる事件は、トスタ市と東隣のトーラス市を含めた周囲で頻発している。一方のガラムは、先日の警察署襲撃時の爆撃のニュースが記憶に新しい。
「ディスクは裏社会で最近流通し始めた爆弾だから、一般人のレティナさんが知らないのも無理ないよ。実物を見たのは僕も初めてだし」
「へぇ、この爆弾ってどうすごいの?」
「ディスクの爆発の威力は一般的なダイナマイトの半分以下なんだけどね。もちろん人に対して致命的だよ。ただ、粘着面のある方にだけ爆発の衝撃が出力されるようになっているみたい。スイッチのある面は風が返ってくる程度で、爆風や破片等の跳ね返りさえ気をつければゼロ距離で人が立っていても問題ないらしい。もともとはトンネル発掘や解体工事の発破のときに作業員の安全をできる限り確保するために開発された爆弾だったんだけど、自爆テロに利用されるようになって人知れず表社会での流通はすべて禁止されたって師匠から聞いたよ」
スイッチのある面には衝撃がないということは、爆発する粘着面を外側に向けるようにして身体に巻き付ければ「安全に自爆する」といった用途も可能なのだろう。テロ思想のある者の手に渡ると考えると背筋が凍る思いだ。
爆弾魔による騒ぎが始まる少し前から、爆弾による殺傷事件があったという報道を何件か聞いたことがある。もしかすると、あれはディスクによる自爆テロが報道規制された上で伝えられたものだったのかもしれない。
「これも師匠が言っていたんだけど、流通が制限されて生産数が非常に限られているから裏社会では1枚数百万から数千万で取引されているらしい。このノブを利用して時限で爆発させることもできるし、薄型で服の下やカバンの隙間に隠しやすい。この前のガラムによる警察署への襲撃も、おそらくディスクが使われたんじゃないかとも言われてる」
「じゃあ、そんなものを倉庫に大量に保管しているモーシュシヒルたちって…」
その先は言わずもがな、と私とティオ君は目を合わせて頷く。モーシュシヒルは裏社会と繋がっている。そして、それはガラムへと繋がるヒントとなりうる。セロさんは私達の協力関係を築くためだけにこの依頼を選定したはずなので、こうしてヒントが得られたのは全くの偶然であろう。
「ティオ君。ホールから少し歩いたところにある休憩場に、1人だけスタッフが残ってる。トリックを聞き出すついでに、このディスクについても聞いてみるってのはどうかな?」
「いいね、賛成!」
そういう手段はティオ君好みのようだ。
◆ ◆ あるスタッフの男の視点 ◆ ◆
イベント設営の職を転々として、ここでもう6件目になる。モーシュシヒルの公演は日に日に規模を増していて、俺の裏方としての活躍の場が増えてきた。給与も十分で、俺はココに骨を埋めようと思っている。しかし、前回のトスタ公演で機材に左足を挟まれてしまい、しばらく満足に歩けなくなってしまった。一昨日から他のスタッフは次の開催地に向けて出払っている。俺はボスから安静にしろと指示されて、スタッフの宿直所に残って事務作業を続けているところだ。
標準の就業時間はとっくに過ぎたが、ここで仕事を終えても宿直室で寝るだけだ。明日の分の仕事まで片付けておいて、明日はサボってしまおう。どうせ誰もいないんだから、咎めるヤツはいないさ。
今日の夜は雨上がりの高い湿度で寝苦しくなると天気予報で聞いていたが、どうも先程から寒気がするほど涼しい。手足の末端の感覚がおぼろげになるほどだ。キーボードを打つ手がうまく動かない。ここは冷暖房が集中管理されているはずなので、センサーがやられちまったんだろうか。移動するのも一苦労なので、わざわざ点検しに行くのは面倒くさい。
春先まで使っていたカーディガンが、座っているオフィスチェアの背にかけっぱなしだったのを思い出す。腰をねじりそれに手を伸ばして袖を通す。床に足をつけていると身体の芯から熱が奪われてゆくように思えて、ギプスを巻いた左脚だけをだらりと残して、右脚だけをあぐらをかくように座面に持ち上げる。しかし、それでも身体は冷えていくばかりである。
昔の仕事場で生鮮食品を扱うでっけぇ冷蔵庫の中に入ったことがあるが、そのときと同じようなえらく清涼感の強い冷たい空気が鼻の穴を通って肺を満たしてくる。肺に入ったその冷たい空気が、寒さを全身にしっかりと伝えてくる。
だんだんとまぶたが重くなっていく。まつげの一本一本にダンベルを括りつけられたようだ。まだまだ仕事は残っているんだ。ここで眠ってしまったら明日の実質的な休暇がなくなってしまうんだ。それを理性ではわかっていても、どうしてもこの眠気を振りほどくことができない。
俺は事務作業をしていたパソコンのキーボードに顔面を突っ伏して意識を失ってしまい、起動していた表計算ソフトのセルには延々と文字が入力され続けていった。
◆ ◆ レティナ視点 ◆ ◆
「おはようございます。意識ははっきりしていますか?」
スタッフの男が覚醒したのに気づいて、私はそう声をかけた。
「う、あぎ……? あ? なんだこれ?」
「混乱されるのも無理はありません。あなたの状況をお伝えしますと、寒さで気絶したあなたは、両手両足が拘束され目隠しされています。警備はこのことに気づいておりません。あなたが解放されるためには、私の質問に対して真実を回答することが必要です。理解できましたか?」
わけのわからない状況に放り込まれて、急に状況を説明する女の声が届いたのだ。男が軽くうめきながら3秒以上停止している。混乱して思考がストップしていることだろう。
私は近くに落ちていた金属製の30センチ定規をその男の首筋にそっと当てた。男は刃物か何かを首筋に当てられたと勘違いしたはずだ。身体を硬直させて口早に「わかった、わかった」と連呼した。
「2点だけ質問させていただきます。回答が不明瞭であれば、追加の質問を行うことがございます。嘘の発言をしていると確認できた場合は、あなたはそのまま放置され、この寒さの中で凍死してしまうことをご承知おきください」
定規を首筋から離してあげると、男は大きく何度も頷いた。
「あなたが操作していたパソコンを拝見するに、あなたはショーにおける全体の音響機材配置に関する主担当のようです。したがって、マジシャンコンビのモーシュシヒルがどのようなトリックを用いて瞬間移動を行うかを、ある程度は知る立場にいたと推察されます。では、1点目の質問です。あなたはモーシュシヒルのトリックについて知っていますか? 知っているのであればその内容について教えて下さい。知らないのであれば、モーシュとシヒル本人または周囲のスタッフの会話などから類推できるトリックについて教えて下さい。回答をどうぞ」
スタッフの男に対してなるべく無感情に抑揚を少なくして質問を投げかける。拘束した犯人は冷酷な性格かもしれないと思わせるためだ。
「う、お、俺は知らねぇ。ボスたち……、モーシュさんとシヒルさんのうち、シヒルさんが機材関係に詳しくて俺達の機材チームを直接指揮してる。2人ともすっげぇ秘密主義だ。俺達は音響機材を搬入して配置し、そしてプログラムどおりに音楽や効果音を流すだけで、トリックについては関与してない。……それこそ、音響操作室でモニターされる映像を見て、俺達もあの手品に驚いてるくらいだ。道具チームと交流することはあるが、トリックについて聞いたことはない」
「なるほど、回答ありがとうございます」
やはり、権限の大きなスタッフにもトリックについて知らされていなかった。そのことについて違和感を持っていないこのスタッフの好奇心の乏しさに疑問は残るけれど、聞きたいことには関係がないので無視しておく。
しかし、ここまで調査して手がかりがないということは、逆にそれは1つの事実を指し示していることになりそうだ。
「では、2点目の質問です。あなたはホール横の倉庫の奥の小部屋に保管されている、円盤状の物体について知っていますか?」
「あ……? ああ。あれが何なのかは知らないが、それが保管されていることは知ってる。数週間前、俺達は国外公演をしていて、その帰りの航空便でシヒルさんが載せた荷物だ。モーシュシヒルの専用便で運ぶように俺達機材チームに指示されたよ。保安検査を回避するように言われていたから若干きな臭い予感はしていたんだが、何かマズいブツだったりすんのか……?」
「……回答ありがとうございます。残念ながら、あなたからの質問にはお答えいたしません」
ディスクは国外から密輸されたものということがわかった。そして、マジシャンコンビのモーシュシヒルのうち、シヒルの方がショーの演出においても裏のやりとりにおいても精力的に動いているとのことだ。
事態は大きく動き出した。どうやら、依頼人のレオに対しては私達で適当に考えたトリックを伝える必要がありそうだ。
「ご協力ありがとうございました。およそ30分後に警備の者があなたを助けに来るように手配しておきます」
「えっ、ちょと、まっ」
拘束されたまま身を悶えさせる男を放置して、私は宿直室を後にした。
扉を開くと、外ではティオ君が腕を組んで壁にもたれかかって待っていた。
「リングフォンで尋問の様子は聞いてたよ。なかなか堂に入っていたじゃん」
「そお? 研究室に新しく入った学生に研究成果を問い詰めるような感覚でやったら上手くいったね」
「うわぁ。それ、パワハラってやつじゃないのぉ?」
ホールから宿直室の前に移動した後、ティオ君はこの宿直室の換気口から大量の氷を送り込んで室温を極端に下げていた。ティオ君が《
「それで、ティオ君。もうわかってると思うけれど……」
「うん。考えてなかったわけじゃけど、まさかここで出会うとはね。モーシュシヒルのコンビは《眼の能力》を持ってる可能性が高いってことだよね、レティナさん」
「瞬間移動能力、だね」
初めての2人での大仕事に、より大きな課題が舞い込んできた。
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